オバマ投入とヒスパニック系
バイデン大統領に代わり、ジョージア、ネバダ、アリゾナ等の激戦州に入るのはバラク・オバマ元大統領である。特に、ネバダ州とアリゾナ州ではヒスパニック系(中南米系)の票が鍵を握るが、民主党候補はヒスパニック票の獲得で苦戦を強いられている。そこで、オバマ元大統領は、アリゾナ州フェニックスのヒスパニック系住民が多い地域を選んで訪問した。
なぜ、オバマ元大統領がヒスパニック系の動員を促しているのか。雑誌エコノミストと調査会社ユーゴヴの共同世論調査(22年10月29~11月1日実施)によると、ヒスパニック系の58%がバイデン大統領に対して「好感を持っている」、35%が「好感を持っていない」と回答した。ヒスパニック系のバイデン氏に対する好感度は50%を超えている。
しかし、米大統領選挙において女性、黒人、ヒスパニック系、若者およびLGBTQ(性的少数派)の有権者を多く含めた「異文化連合軍」を形成する民主党候補にとって、ヒスパニック系の58%は決して高い数字ではない。12年米大統領選挙ではオバマ元大統領はヒスパニック系の71%、ライバルのミット・ロムニー候補は27%を獲得した。次の大統領選挙で民主党候補はヒスパニック系から7割以上の得票率を得て、共和党候補を3割以下に抑える必要がある。58%の好感度では、ヒスパニック系の7割以上の得票率を得るのは難しいだろう。
これに対して、トランプ氏はヒスパニック系における好感度を着実に伸ばしている。エコノミストとユーゴヴの共同世論調査では、ヒスパニック系の好感度は38%で、3割を超えており、前回の同調査(同年10月22~25日実施)と比べると2ポイント伸ばした。ヒスパニック系は、バイデン政権がトランプ前政権から引き継いだ公衆衛生法42条および困難な市民権取得に関して不満を抱いている。コロナ禍で成立した公衆衛生法42条では、メキシコとの国境から米国に入る不法移民の親子を強制的に追放できる。
現在のバイデン大統領では、ヒスパニック系を投票所に動員できないのは明らかだ。従って、民主党はバイデン氏よりも同系から人気があるオバマ元大統領に依存せざるを得ない訳である。
オバマの力
オバマ元大統領は11月1日ネバダ州、翌2日アリゾナ州を訪問して演説を行った。冒頭、ナンシー・ペロシ下院議長の夫ポール氏が、20年の米大統領選挙結果の否定論者によって襲撃された事件を取り上げて、政治的暴力反対を強く訴えた。その上で、「誰が民主主義のために戦ってくれるのか」と有権者に問いかけた。
また、オバマ氏は「なぜ真実を語らない人に投票をするのか」と疑問を投げかけ、「真実が重要ではなくなってしまう。米国はとても危険な状態にある」と強い警告を発した。
さらに、
続けてトランプ氏とMAGA候補(Make America Great Again:米国を再び偉大に)が争点にしている「犯罪の増加」
ホワイトハウスを去ってから約5年が経過しようとしているが、同氏には支持者を魅了する力が十分あった。