2024年5月6日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年6月6日

 再生可能エネルギーにもまた環境問題がある。広大な土地を要し、また、エネルギー消費地から遠く離れた場所で発電するので、そのエネルギーの輸送のための莫大な設備と経由する土地とを必要とする。政府が介入しない限りは、代替燃料は、安い化石燃料に圧迫されて、CO2排出制限は思うままに行かない。

 目的は、「野心と柔軟性(ambitionとflexibility)」の両方を達成することにある。それはどんな政策であれ地球温暖化を阻止できないのなら価値が無いという意味で野心的であり、会社や個人が現実的に対処できるという意味で柔軟なものでなければならない。それは最終的には、オバマ大統領の肩にかかっている、と論じています。

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 確かに、アメリカのエネルギー政策は難しい問題に直面しています。シェールガスの導入は革命的と言えます。ガスが石炭を代替して、石炭の使用を減らせば、CO2削減に大きな効果があるでしょう。ところが、今までの環境政策のおかげで、再生可能エネルギーの開発も飛躍的に進歩し、また、自動車の省エネ化も革命的に進んでいますが、まだまだ政府の保護なしでは、化石燃料に対抗するには至っていません。ここで、20年以上かけて達成したこの進歩にブレーキをかけるような政策を取ることも難しいでしょう。

 この論文は、そのディレンマを論じたものです。しかし、問題点は十分に指摘していますが、明確な結論はありません。ただ、中立公正のように論を進めてはいますが、シェールガスの導入により、石炭依存度は減り、CO2排出は削減されることになるが、その結果、今まで開発してきた再生可能エネルギーの技術や低燃費の車はどうなってしまうのかという危惧を表明しているものと受け取ることができる内容です。CO2がいずれゼロにされなければならない、というのは極論に過ぎます。

 長期的に考えて、再生可能エネルギーの開発が今後とも急速に進むのか、それとも、アメリカでのシェールガス、日本でのメタンハイドレートなどの開発が21世紀のエネルギー政策の主流となるのか、両方の可能性のある状況であると言えます。

 地球温暖化自体は科学的事実ですが、莫大なコストを払ってでもそれを徹底的に防止すべきかどうかは、政策論として、再考する余地があるでしょう。環境主義は、20世紀後半から21世紀にかけての一時の流行りに留まるかもしれません。世界金融危機後、温暖化対策を求める議論は、以前よりも低調ないし穏健になりつつあるようです。エネルギー政策において、経済性の論理が復権しているということでしょう。原発ゼロの可否の問題もそうした文脈で考える必要があります。

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