第三に、ジェスチャーが見えない、ということである。主に顔だけしか映っていない状況で会議することが多いオンラインでは、相手の身振り手振りはほとんど目に入らない。しかし、相手の気持ちを理解しコミュニケーションを円滑に行う上では、実はこういった表情やジェスチャーなどの非言語情報の方が、言葉、すなわち言語情報をはるかに超えて大きな役割を果たしていると言われる(メラビアンの法則)。
この非言語情報が著しく欠如するために、オンラインコミュニケーションの難しさがある。相手の意図を正しく理解できずにミスコミュニケーションが発生し、不要な対立が生じる危険性すらある。
ただ、重要なことは、だから対面に戻すべきだ、という発想ではない。必要なのは、その理解不足を埋めるためのオンラインに適したコミュニケーションを心掛けることである。では、実際にはどうすればよいのだろうか。
筆者は、メール等を用いた文字情報で事前に互いの意思疎通を図り、当日の協議事項に対する共通認識をあらかじめ構築することを推奨している。
オンラインで交渉を円滑に進める3つの手順
ここでは、オンラインを介して本格的な交渉を行う場合を想定して考えてみよう。交渉の時間軸は、①オープニング、②協議事項の確認、③各項目に関する議論、④クロージングと進むことが一般的であろう。
このとき、いざ交渉となると、つい③の話し合い部分に目が行きがちであるが、実はそれ以上にその前段の①と②がその後の流れを左右することを忘れてはならない。つまり、そもそも何を交渉するのか? という大前提である。これを怠ると、話は噛み合わず合意にたどり着けないばかりか、本来合意できたであろう部分まで決裂する事態が生じ得る。
このような状況を回避するためにも、しっかり協議事項を整理して臨みたい。そしてそのためには、以下3つのプロセスが求められる。
まず、「協議事項を丁寧に抽出・整理する」。これは、重複があっても、不足があってもいけない。一見簡単な作業のように思えるかもしれないが、実際には、協議事項がA、B、Cと3つあるうちAとBは相互に関連するというような場合もあり、一筋縄ではいかない。そもそもそうした関連性を認識しないまま交渉に入ってしまう場合も多く、議論が迷走する原因になる。
次に、「協議事項の優先順位を決める」。たとえば、あなたの会社が今回の交渉でより重視するのは契約年数なのか、それとも、商品の価格の方なのか、などである。この部分をチーム内でしっかり共有しておけば、交渉が難局を迎えた際に、相手にどのような打開案を提示するかについて迷うことなく話を進めることができる。