そして最後に、「各項目について協議する順番を決める」。ここでは、合意しやすい協議事項から交渉を始めるのが原則だ。まだ互いに緊張していて相手の様子もわからないうちから、双方の利害が対立するような厳しい問題を持ち出せば、より緊張感が高まり難しい話し合いになることは言わずもがなだろう。
まずは、あまり構えずに話し合える事項から始めて、豊かな言葉のやりとりを重ね、相手への価値理解を深めるために注力することが重要だ。その上で難しい課題にとりかかれば、お互いに知恵を出し合って協働し、創造的選択肢を生み出す可能性が高まる。
以上3つの作業を通じて、参加者は必然的に交渉全体を俯瞰し、見取り図を持つことができるようになる。相手の関心事項、それに対する優先度、重要度が明らかになり、実際の協議に入る前にお互いの考えをうかがい知ることができる。
この3ステップを事前にメール等でやりとりし、共通認識を醸成した上で当日を迎えれば、オンライン上であってもこれまでよりはるかにスムーズで手応えのある交渉が実現するだろう。明示された文字情報を確認しながら協議することで、非言語情報の不足による相手に対する理解度不足が補われ、自分のチーム全体の足並みをそろえることもできる。
対面でも効果的な心構え
もちろんこの手法は対面の際にも有効で、表情やジェスチャーを交えた話し合いができる状況であれば、なおさら高い効果が期待される。限られた時間内に、最大限の結果を出すことが求められているからこそ、交渉前に事前にすり合わせを行い、現場では中身の議論に集中することが肝要である。
また、普段の打ち合わせや会議においても、オンライン上ではミスコミュニケーションが発生しやすいことを常に念頭において、簡単でよいので事前に文字を介した意思疎通を行うことで、効率的かつ効果的な時間に改善することができる。
現在は、「ウィズコロナ」なのか、「ポストコロナ」なのか、あるいは、緩やかに前者から後者に移行する段階にあるのかはわからないが、オンラインの活用はますます進むことが予測される。コロナの出現によってわれわれは行動変容を余儀なくされ、オンラインツールを活用したアウトプットの出し方を身につけてきた。その一方で、その限界も見えてきた。
対面かオンラインかという二者択一ではなく、それぞれのメリットを享受し、デメリットを別の形で補う柔軟性や発想力が、今後新たなチャンスや成果を生み出す大切な鍵になるだろう。