2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年11月21日

 11月9日、ロシア軍はウクライナ南部のヘルソン州の州都ヘルソン市からの撤退を発表した。ワシントン・ポスト紙コラムニストのマックス・ブートは同日付の論説‘Why the Russian retreat from Kherson is so significant’で、なぜヘルソンからのロシアの撤退がそれほど意義深いのか論じている。要旨は次の通り。

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 ヘルソン市からドニエプル川の東へのロシア軍の撤退は、ロシア側が奪った唯一の州都を引き渡すことを意味する。 

 この決定はプーチンにとり屈辱的な敗北である。ヘルソンは重要な黒海の港であり、9月にプーチンが不法に併合した4州の一つである。ロシア側はヘルソンをミコライウとオデッサを取るための基地として使うことを望んでいた。そうなれば、ウクライナを黒海から切り離すことができただろう。

 撤退により、ロシア側はドニエプル川西岸の拠点を失うだけでなく、ドニエプル川からクリミアに水を運んでいる北クリミア運河へのアクセスも失う。2014年、ロシアの不法なクリミア半島占拠への報復としてウクライナ側は水流を止めた。今後も止められるだろう。

 これはクリミアを保持することを難しくし、プーチンが欲しがっているロシアへの「陸の通路」を更に掘り崩すだろう。プーチンがケルチ海峡にロシア本土とクリミアを結ぶために実際に作った橋は、10月に謎の爆発でひどく損傷した。

 ヘルソン放棄の前に既に、ロシアは2月以来占拠した領土の約半分を失っていた。この撤退は、ロシア国民に戦争がうまくいっていないことを明確にし、ウクライナ人を元気づけ、親ウクライナの西側連合の団結を助け、米議会が大規模なウクライナ支援を採択することを推進するだろう。

 撤退について最も良いニュースは、プーチンがヒトラーではなく合理的であるとの証拠を提供していることである。プーチンは自分の利益になるならば後退する。撤退は、第三次世界大戦の懸念を小さくする。プーチンは不安定でも馬鹿でもなく、自殺的でもない。

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 ロシア軍がヘルソン市から撤退することを決めたことは喜ばしいニュースである。ウクライナ側は2月以来、ロシア軍が占拠した領土を次々と解放しており、ロシア国民にもロシアが負けていることがますます明らかになってきていると思われる。ロシア人のこの戦争への支持はこれでますますなくなっていくだろう。


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