フィナンシャルタイムズ紙の外交問題コメンテーター、ギデオン・ラックマンが、10月17日付けの論説‘Diplomacy should not be a dirty word in the Ukraine war’で、ウクライナ戦争につき、外交とウクライナに対する軍事的支援のこれら二つのアプローチは並行して進めるべきであり、互いに補完するものだ、外交が必要だ、と述べている。主要点は次の通り。
・ロシアは益々必死になっている。ロシアの弾薬は枯渇してきており、プーチンは、残る唯一の道具として核の使用を脅かし、ウクライナや西側の国を譲歩させようとしている。
・62年のキューバ危機に見られたような秘密交渉を伴うような外交がウクライナ戦争には欠落している。
・外交を強力な軍事的支援に代わるものと考えることは間違いであり、外交は戦闘と同時に進んでいる必要がある。
・米国とロシアのチャネルはほとんどない、第三者の外交はもう少し成果が出るかもしれない(例えば、トルコやインド)。
・幅広いパラメーター(交渉要素)の中には、ロシアの2月24日以前のラインまでの撤退、ウクライナの海へのアクセス、空域支配、安全保障など生存可能な国家の保証等があるがクリミアは最大の難問である。創造的解決のための外交がもっと必要だ。
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上記のラックマンの主張は思慮深い。外交交渉には良いタイミングが必要だとは良く言われることだが、2月のロシアの侵略から既に半年が経過、ウクライナの国土やインフラは激しい被害を受け、人命も多くが犠牲になり、今や冬季の到来を控え、ロシアの攻撃により電力供給が激減している。
他方、ロシアも多くの軍人が犠牲になり(米国は死傷者数7万、8万とも推計)、弾薬やミサイル等の武器の供給能力にも問題があり、政府に近い者を含め国内の反対も根強いと言われる。経済については思いの他に強靭だとの見方もあるが、制裁は相当効いているに違いない。時間が経てば、更に効くだろう。そう考えると、双方にとり外交を追求すべき時期に入っているはずである。