ウクライナ戦争ではロシアの司令官が次々に更迭されている。戦争中の状況としては極めて異例である。これにつき、ワシントン・ポスト紙ロシア担当記者のイリュシナらは、クレムリンは戦争がうまく行っていないことの責任を負わせ、軍司令官を更迭している」(‘Kremlin, shifting blame for war failures, axes military commanders’)との解説記事を10月7日付で同紙に書いている。記事は、次のように分析する。
・制服組の上層部での混乱はロシアの戦争計画における基本的な間違いと指揮命令系統の混乱を際立たせる。迅速なキーウ掌握とウクライナ政府の転覆という主要な軍事目標の達成に失敗し、最近は東部および南部前線で退却した。
・しかし解任は、戦争がうまく行っていないとの公の場での批判、特にタカ派などからのものが声高になる中で、政治エリートが責任を他に押し付ける動きでもある。ロシア軍の指揮官たちが批判の的になっている。ショイグ国防相、ゲラシモフ参謀長、プーチン自身は直接的な批判を逃れている。しかし最近のショイグ批判は彼の地位も危ないかもしれないことを示した。
・最近の解任の発表は責任追究の要求を満足させる必要を反映しているかもしれない。こういう要求や戦争一般の批判はプーチンの部分的動員宣言以来増えている。この部分動員令は20万人以上の戦闘可能世代の人の国外脱出につながり、間違って招集された人および徴集兵への悪い待遇(最低限の食事と古い兵器を含む)への怒りの声を上げさせている。
・今やロシア側で全体として戦争を統括しているのは誰かはっきりしない。
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ロシアは2月に、総司令官を任命することなくウクライナ戦争を始めたが、全体を統括する司令官が必要ということで4月にドヴォルニク陸軍大将(シリアへの軍事介入における残虐行為で有名)を任命したが、7週間で更迭された。その後、5月にZhidkoが後任になったが、1カ月で交代させられた。ようやく10月4日にスロビキン上級大将(前職:航空宇宙軍総司令官)が就任したと発表されたが、総司令官の人事にしてこの有様であり、混乱がある。
その下の階級の司令官たちは、退却やその他の問題で更迭されている。ロシアのメディアによれば、10月7日、東部軍管区司令官チャイコ大将が更迭され、ムラドフ中将が後任になった。