2022年12月8日(木)

デジタル時代の経営・安全保障学

2022年10月19日

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川口貴久 (かわぐち・たかひさ)

東京海上ディーアールビジネスリスク本部主席研究員

1985年福岡県生まれ。専門は国際政治・安全保障、リスク管理。慶應義塾大学KGRI客員所員。2010年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了、08年横浜市立大学国際文化学部国際関係学科卒。最近の論考に「経済安全保障を考慮したガバナンス・リスクマネジメント態勢の構築」(東京海上ディーアール)、「2020年アメリカ大統領選挙と中国の影響力行使」(笹川平和財団)など。
 

 米国「スペースX」社が提供する衛星通信サービス「スターリンク」がウクライナでの戦争で大きな注目を集め、日本でもサービス提供が始まった。しかし最近では、スペースX社の主要株主および最高経営責任者であるイーロン・マスク氏がウクライナでのサービスの経済合理性に言及したため、将来のサービス提供が懸念される事態にも陥った。本稿では、ウクライナ戦争で活躍中のスターリンクの有効性を再確認するとともに、カリスマ的経営者であるマスク氏の政治リスクについて考えてみたい。

(ZUMA Press/アフロ)

広範囲で高速通信を目指すため数千の衛星ネットワークをつくる

 米国「スペースX」社は2022年10月11日、日本で衛星通信サービス「スターリンク」の提供を開始したと発表した。スターリンクとは、低軌道の小型衛星コンステレーションによるインターネット接続サービスである。

 「低軌道」とは高度2000キロメートル以下の軌道を指し、スターリンクは高度550キロメートル前後で運用されている。正確にいえば、スターリンク衛星群は高度や傾斜角が異なる複数のグループに分類され、今後は高度340キロメートル前後の衛星の打ち上げ・運用も予定されている。

 この高度はスターリンクの通信サービスが比較的高速かつ低遅延とされる大きな要因だ。速度は場所や条件により異なるものの、世界各地のダウンロードは100Mbpsを超えていると報告されている。

 ただ、高度が低くなると、一つの衛星がカバーできる範囲は小さくなるため、複数の衛星を連携・協調させる必要がある。そのための仕組みやシステムが「衛星コンステレーション」である。

 コンステレーションとは「星座」等の意味だが、スターリンクは2686基の衛星(10月13日時点、稼働中のみ)から構成され、最終的には4万2000基の体制を目指すという(ただし、同社は最近、4万2000基は必要ないかもしれない、との見方を示している)。

 同社ウェブサイトでは、無数の衛星が地球を覆いつくし、移動している様子をリアルタイムで確認できる。その様子は「星座」というよりも「銀河」と呼ぶ方が正確だろう。

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