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Wedge OPINION

2022年11月25日

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小黒一正 (おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部 教授

1974年生まれ。専門は公共経済学。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月より現職。近著に『日本経済の再構築』(日本経済新聞出版社)など。

 世界平均(1.3%)は概ね日本(0.4%)の約3倍であり、急速に少子化が進むわが国が自衛官の定員で世界標準の体制を整備するのは、もはや現実的ではないことは明らかである。自衛隊は、精強さを保つため、若年定年制および任期制という制度を採用しており、自衛官の定年は現在55歳となっている。

 防衛省の職員数(27万人)を維持するためには、毎年1万人以上を採用する必要がある。実際、ここ数年の自衛官等の採用状況をみると、毎年1.4万人~1.5万人を採用しているが、それでも自衛隊の定員は充足率を満たしてない。

 22年の出生数が80万人割れとなるのは確実だが、今の出生数の減少トレンドが継続すると、40年には出生数が60万人割れとなる可能性も高い。その時の0歳児が20代になる場合、60万人のうち1.5万人、すなわち60人に1.5人が自衛官等になるとは思えず、現行の体制の見直しも急務であろう。人員の不足は、戦略や装備で穴埋めするしかない。

日本の防衛に山積する課題
日・米・韓で議論の場を

 なお、今回のロシアによるウクライナ侵攻では、ウクライナ南東部ザポロジエ原発の付近で爆発が起こったが、幸いにして、最悪の事態は免れた。しかしながら、仮に大規模な爆発が起きていれば、放射線による被害は東欧諸国などにも及ぶ可能性があった。

 ザポロジエ原発は欧州で最大規模の総電気出力を有するが、それは世界3位の規模に過ぎず、世界最大の総電気出力を持つのは、日本の新潟に立地する「柏崎刈羽原発」であり、有事の際に敵国が核を保有していなくても、原発施設を攻撃すれば、核攻撃と似た効果をもたらすことは可能であるという現実も忘れてはいけない。

 この問題に対する議論は全く無いが、この防衛問題にどう対処するのか。一つの戦略は、防衛装備の増強で対処する方向性もあるが、政府債務が累増するなかで財政的な制約も存在する。また、人口減少が急速に進む中で自衛隊の人材確保にも限界があるとするならば、何か別の戦略を検討する必要があるかもしれない。

 このような状況のなか、防衛力の強化を図るため、日米間での核シェアリングの議論もあるが、現実的に米国が日本と核の運用を共有する政治判断をする可能性は低いと思われる。しかしながら、実現に向けた協議を行っていること自体が「抑止力」として機能するとの考え方もある。

 また、中国や北朝鮮などの国々をできる限り刺激せず、政治的な摩擦を回避する戦略も重要である。不確実性が増す国際情勢において、日本の防衛力を強化するため、議論を一歩でも前進させるためには、日本単独での米国との協議でなく、国内や国外の世論にも十分に配慮しながら、似た問題意識をもつと思われる韓国とも連携・協力し、日本・米国・韓国の3カ国で議論を行う場を構築する戦略も重要ではないか。

 
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