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小黒一正 (おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部 教授

1974年生まれ。専門は公共経済学。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月より現職。近著に『日本経済の再構築』(日本経済新聞出版社)など。

 32年ぶりに1ドル150円を突破した。急速な円安が進み、米国と日本の金利差の拡大に注目が集まっている。この理由は、いわゆる「金利平価説」を利用すれば、円安の進行を簡単に説明できるためだろう。

 しかしながら、現在の円安は、本当に米国と日本の金利差の拡大のみの影響なのか。この論考の前半では、金利平価説のメカニズムを概説し、後半では、テレビや新聞が見落としている視点として、構造的な貿易赤字の問題を取り上げたい。

急速な円安が進んでいる(ロイター/アフロ)

 まず、円安と金利平価説の関係である。金利平価説とは、「どの通貨で資産を保有しても収益率が同じになるように為替レートが決定されるとする説」をいう。

金利裁定取引の条件から、①日本の金利が変化せず、米国の金利が上昇すれば、円安が進むことや、②米国や日本の金利が変化せずとも、将来における円安期待が高まると、円安が進むこと、等を示すことができる。このうち、②は、円安の自己実現的な期待とも関係する。

 このメカニズムを説明するため、日本の金利をr、米国の金利をR、現在の為替レート(例:1ドル100円)をE、1年後の予想為替レートをE*(例:1ドル150円)とする。このとき、金利裁定取引の条件から、「(1+r)E=(1+R)E*」という関係式(※)が成立し、この式から上記の①や②のファクトなどが分かる。

 最初に※の関係式を導いてみよう。まず、1円を日本国内で運用する場合、金利がrのとき、1年後には(1+r)円になる。

 他方、1円をドルに変換して、米国で運用するケースはどうか。この場合、まず、現在の為替レートはEなので、1円は(1/E)ドルになる。これを、米国の金利Rで運用すると、1年後は[(1+R)/E]ドルになる。市場は1年後の為替レートをE*と予想しているので、[(1+R)/E]ドルを円換算すると、[(1+R)E*/E]円になる。

 ここで問題なるのは、(1+r)円と[(1+R)E*/E]円の大小関係だ。

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