しかし、欧州諸国からすれば、「天然ガス成金」のイスラムの国が欧州人の大好きなワールドカップを主催するということが面白くないのであろう。近年、欧州の有力サッカークラブがペルシャ湾岸の産油国に次々と買収されていることも、この面白くない感情を強めていると思われる。
米国のパートナーがサウジからカタールへ変化
バイデン政権下でカタールが米国の有力パートナーとなっていることは、トランプ前政権ではサウジ、UAEが米国の大事な同盟国と見なされ、両国のカタール・ボイコットを黙認していたことを鑑みると興味深い。しかし、中東地域最大の米空軍基地であるアル・ウデイド基地をホストするカタールは、一貫して米国の中東戦略上の要石なので、ある意味当然である。
トランプ前大統領は、カタール・ボイコットの時、サウジラビアとUAEに味方して、アル・ウデイド基地の撤退まで言い出して、あわてて周囲が止めた。撤退していれば米軍のペルシャ湾地域での作戦能力が大きく失われたのみならずサウジとUAEが即刻カタールを軍事占領したであろう。カタールがウクライナ紛争絡みで親西側を貫いているのは、周囲を敵対国に囲まれている以上、当然の遠交近攻策だ。
2017年から去年まで続いたサウジ、UAEなどによるカタール・ボイコットは、ペルシャ湾岸のアラブ産油国からなる湾岸協力理事会(GCC)の内部は実は全く一枚岩ではないことを如実に示した。例えば、現在、サウジとUAEは、サウジ皇太子とUAE大統領との個人的関係から蜜月関係にあるが、過去、ブライミ・オアシス事件という深刻な国境紛争があったように伝統的には敵対関係だ。小国カタールとしては米国の直接の後ろ盾を得るためにアル・ウデイド基地を誘致し、カタール・ボイコットでその保険は役に立つことが証明されたと言えよう。