2022年10月3日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年9月1日

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 7月31日、米当局は、アフガニスタンの首都カブールにおいて、アル・カイダの最高指導者ザワヒリをドローンにより殺害した。アル・カイダの指導者がよりによって、カブール市内に潜伏していたことは意外であった。米当局者によれば、ザワヒリが匿われていた場所は、タリバンと関係しているハッカーニ・ネットワーク(タリバンの最強硬派と言われ、アル・カイダと関係が深いとされる)の支配下にあったという。

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 今回のザワヒリの殺害については、大別して二つの観点から分析できるだろう。一つは、再び指導者を失ったアル・カイダがどう出てくるのか、例えば、報復を行うのかという点である。もう一つは、この出来事がアフガニスタン情勢にどのような影響を及ぼすのかについてである。

 第一の観点については、アル・カイダによるイスラム過激主義テロの脅威は無くなってはいないが、ザワヒリが殺害されようがされまいが、既に格段に低くなっていると考える。米国と西側諸国によるアル・カイダとイスラム国(IS、ISIS)に対する徹底的な討伐で、彼らは、過去に実行した様な大規模なテロや支配地域の獲得は困難になっている。しかし、イスラム過激主義の脅威自体が無くなったわけでは無く、今後も一匹狼型のテロは続くであろうし、一匹狼によるテロでも深刻なダメージを与えることはあり得るので油断は出来ない。

 第二の観点、今後のアフガニスタン情勢は深刻である。8月3日付けフィナンシャル・タイムズ紙社説‘Al-Zawahiri killing only highlights Afghanistan’s problems’は次の諸点を指摘する。

・ザワヒリの殺害は、1年前に米国と西側諸国の軍隊が撤退した後に残されたアフガニスタンの混乱に改めて焦点を当てた。タリバンは彼らの厳格なイスラムをアフガニスタンの社会に強いようとしている。例えば、女性に対して顔を隠すことや10代の少女が学校に行くのを禁止するなどである。人権団体は、(米軍に追放される)2001年までタリバンが行っていた野蛮なルールを復活させようとしていると非難している。

・米国とその同盟国がアフガニスタンの90億ドルの外貨準備を凍結し、経済援助を禁止し、そしてタリバン政権に制裁を科した後、アフガニスタンの人々の苦しい状況は、ほとんど絶望的になっている。去年、経済は20%縮小し、人口の半分に当たる4100万人が飢餓の淵にいる。このような状況は、新たなイスラム過激主義者の温床となろう。

・カタールの様な親西側諸国は、西側諸国に対して女性の権利を回復させるような「相互主義」に基づいてアフガニスタン政府に対する雇用と成長を推進するための財政支援の凍結解除を行うように強く求めている。しかし、タリバン側が公約を実施することは今後も殆ど期待できない。その犠牲者は、アフガニスタンの人々であり、最も利益を得るのは過激派である。

 去年の米軍の撤退以降、タリバンを政府承認した国は無く、外国からの援助は殆ど止まってしまっている。その結果、アフガニスタン国民の生活は、困窮化の一途を辿っている。

 しかも、タリバンは、2020年のドーハ合意で「アフガニスタンをテロリストの温床にしない」と約束したのにも関わらず、アル・カイダの指導者を匿っていた訳だが、タリバン側は、ザワヒリを匿っていた事は一切認めないばかりか、米国がドーハ合意に反してアフガニスタンで軍事作戦を行ったと一貫して米国を非難しているので、これでは、アフガンスタンへの援助の再開はますます困難になろう。

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