2024年11月25日(月)

勝負の分かれ目

2022年12月16日

 しかしながらフルトンは既にWBC世界フェザー級(57・15キロ以下)1位ブランドン・フィゲロア(米国)との2021年11月以来のリマッチとなるWBC世界同級暫定王座決定戦が承認され、本格的なフェザー級転向をシナリオとして描いている。フィゲロアに勝利しWBCフェザー王者になれば、そのまま同級を主戦場とし、WBC&WBO王座を返上する可能性は高い。

 加えて両雄のプロモーターが異なっている政治的な背景もあり、フルトン対井上のスーパーバンタム級スペシャルカードの実現性はかなり低いかもしれないが、それでも何とか実現してほしいと願う声はかなり多いようだ。個人的にもスーパーバンタム級で井上のサイズを上回る〝大型ファイター〟のフルトンとの一戦は井上がまた新たな一面を引き出しそうな予感も漂うことから、ぜひ見てみたいと思っている。

 一方、WBAスーパー、IBF王者に君臨しているのが、ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)だ。リオ五輪のボクシング・バンタム級銅メダリストでアマチュアからプロに転向し、11戦全勝(8KO)無敗。20年1月30日に前王者のダニエル・ローマン(米国)をスプリット判定で下し、2本の統一ベルトを奪取した。21年4月3日には元IBF同級王者の岩佐亮佑(セレス)を相手に5回TKOで完勝し、王座防衛に成功している。

 サウスポースタイルで元トップアマらしく高い技術と速いハンドスピードが持ち味とされ、高いKO率を誇る。アフマダリエフもまたフルトンと遜色ない強豪だ。

 アフマダリエフはボクシングメディアにも「井上とぜひ戦ってみたい」とコメントしていることから井上がハードルをクリアさえすれば、そう遠くないうちにタイトルマッチが組まれる可能性もありそうだ。ちなみにアフマダリエフは前回の防衛戦で左拳を痛めてリハビリ中だが、復帰後にIBF同級1位マーロン・タパレス(フィリピン)との指名試合を義務付けられている。

「パンテラ(豹)」ことルイス・ネリ

 ただ、このようなスーパーバンタム級〝無敗〟現王者2人を巡る現状と照らし合わせてみると、井上が転向後即座にタイトルマッチに臨む流れはやはり難しいかもしれない。それでも、スーパーバンタム級転向後に井上は各団体で同級1位にランクインされる見込みだけにフルトンがフェザー級転向を果たした場合、ベルト返上で空位となったWBCもしくはWBOの王座決定戦に照準を定めることも十分に予想される。

 ここで浮上してくるのが、元世界2階級制覇王者、WBC世界スーパーバンタム級1位で「パンテラ(豹)」の異名を持つ28歳のルイス・ネリ(メキシコ)だ。日本では「悪童」として知られ、その名を聞くだけで拒絶反応をする人もおそらく少なくないだろう。

 ネリは17年8月15日、WBC世界バンタム級王者として通算13回目の防衛を目指していた山中慎介に挑戦し4回TKO勝利を収め、王座奪取。試合前のドーピング検査で禁止薬物が検出されたものの故意の摂取を否定し、調査を行ったWBCからも「確証が得られない」として処分されず王座奪取が認められた。WBC側から山中とのリマッチを指示されたものの、18年3月1日の再戦で今度は体重超過。

 タイトルマッチ前に王座を剥奪されたため山中が勝てば同王座に返り咲く条件で試合は挙行されたが、大ひんしゅくを買う中でネリが2回1分3秒TKO勝ちし、日本のファンを落胆させている。この一件により、ネリは日本ボクシングコミッション(JBC)から「階級制を前提としたプロ競技スポーツであるボクシングに対する社会的信用を著しく毀損する行為」として日本でのボクシング活動永久停止処分を課された。


新着記事

»もっと見る