2024年4月20日(土)

勝負の分かれ目

2022年12月16日

(山口フィニート裕朗/アフロ)

 日本が誇るモンスターの次なるターゲットは――。ボクシングのWBAスーパー、WBC、IBF世界バンタム級(53・52キロ以下)3団体統一王者・井上尚弥(大橋)が13日、東京・有明アリーナでWBO世界同級王者・ポール・バトラー(英国)との4団体王座統一戦に臨み、11回1分9秒KOで勝利。日本人選手初、アジア初、バンタム級史上初、ボクシング史上では9人目の4団体統一王者となる偉業を成し遂げた。WBO新王者となり、WBAは8度目、IBFは6度目、WBCは初とそれぞれの王座防衛に成功し、戦績もデビュー以来破竹の24戦全勝(21KO)とした。

 力の差は歴然だった。決定打を許すまいと終始守りを固めて〝亀〟になっていたバトラーに対し井上はディフェンスをかいくぐって重いボディー、ワンツーを幾度となく叩き込み、ガードの上から強烈な左右のフックを浴びせるなど何度もロープ際へと押し込んだ。5回、6回にはあえてノーガードで顔を突き出し、8回には手を後ろに組んで挑発しながらパンチを誘う余裕まで見せたものの、相手は井上の圧力に負けて積極的な攻撃に転じることすらできなかった。

 そして11回の開始直前に「セコンドアウト」のアナウンスが場内に響き渡り、コーナーの椅子から立ち上がると、余裕綽々で大きく背伸びしてからジャンプ。これがまるで〝号砲〟となるかのようにゴング後、猛ラッシュを仕掛けてロープへ追い詰めるとボディー、フックを的確にヒットさせてダウン。最後、前のめりになったバトラーは立ち上がれず、さらなる攻めを仕掛けようとした井上をレフェリーが制止し試合を止めた。

 試合後の会見で井上はノーガードの意図について「誘い出すという意味合いもあったんですけど、倒されなければいいのかと自分の中で思った部分もある。いら立ってはいないけど、何しに日本に来たんだ、本当に勝つ気があるのかと、そういった思いも含まれていますよね」と淡々とした口調で明かしていた。

2人の〝無敗〟統一王者

 そして4本の世界ベルトを手にしたことで「もうバンタムでやり残したことはない」とも言い切り、かねて示唆していた通りにスーパーバンタム級(55・33キロ以下)への転向を宣言した。

 井上の視界に入っているのは、間違いなくスーパーバンタム級の主要4団体で世界ベルトを2本ずつ分け合う2人の〝無敗〟統一王者だ。

 筆頭はWBC、WBO王者のスティーブン・フルトン(米国)。21勝(8KO)無敗の戦績で無類のスタミナを誇るハードパンチャーと評され、オーソドックススタイルから相手に応じてインファイト、アウトボクシングの両面に対応することもできる難敵だ。

 米メディアやボクシング関係者の間でもフルトン対井上の一戦がスーパーバンタム級屈指のスペシャルカードと目されており、実現を望む声は根強い。フルトン自身もバンタム級4団体統一王者となった井上がスーパーバンタム級転向を宣言したことにツイッター上で触れた米記者に対して「俺がまだ122ポンド(スーパーバンタム級)の王者であることを忘れるんじゃないぞ」と返信し、話題を呼んでいる。


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