2024年2月22日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年1月19日

 トランプ前政権がイランに対して単独制裁を復活させた時、その効果は絶大なものがあった。最大の問題は、建前上、人道関係の取引は制裁の対象外とされるが、その線引きは米国政府が一方的に行うので、金融機関も企業も、リスクを恐れてイランとの取引を全て停止してしまったことである。

 例えば、医薬品をイランに輸出しても、後から米政府に、「当該医薬品は革命防衛隊の病院に納品されたから制裁違反だ」と通告されるリスクがある。米側は意図的に金融機関、企業に過剰対応させて、制裁対象である政府のみならず国民を苦しめ、反政府感情を高めて政権の転覆を狙っているのではないかとすら思える。

米ドルの地位を低下させる単独制裁の乱発

 しかし、この論説が指摘しており、単独制裁の乱発は相手側に対抗手段を構築させる。中国は、イランから最大日量100万バレルの原油をイランから買い続けているが、この決済は中国国有企業である中国石油天然気集団(CNPC)系の「崑崙銀行」が行っているといわれる。同銀行は、米国の金融システムから完全に切り離されているので米国はどうしようもない。

 そして、このような単独制裁の乱発は、基軸通貨としての米ドルの地位を低下させ、米国の世界的な指導力を低下させていることは間違いない。米国の指導力の低下は、同盟国日本としても困ったことであるが、政治的には外交と戦争の間を埋めるものとしての単独制裁は、「やった感」が出せるので、一旦はまると止められないであろう。

 上記の論説は、米国の単独制裁の効果低下に対する解決策として日本、EUとの共同制裁を提案している。ロシアのウクライナ侵攻に対しては日本もEUもそれぞれ対露制裁を実施している。

 しかし、トランプ政権のイランへの単独制裁再開は明らかな国際合意違反であり、日本もEUも同調できないであろう。このように米国の気まぐれな制裁に日本、EUが同調するということはあり得ないであろう。

   
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