4月2日付の英Economist誌が、西側の先例のない厳しい経済制裁を課せられたロシア経済の現状を紹介し、期待されたほどの大きな打撃が生じている訳ではないと述べている。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は先例のない厳しい経済制裁を招くとのバイデンの警告は、プーチンの蛮行を抑止することにはならなかった。ロシアのウクライナへの侵攻に対して、西側は文字通り先例のない経済制裁を発動したが、試されているのはプーチンに蛮行を断念せしめるために経済の力を使う西側の能力である。
一連の制裁のなかでも最も破壊的な威力を持つと見られているのが、中央銀行の資産の凍結という先例のない措置である。ロシアにとってロシア中銀が保有する外貨準備は制裁に耐えるための有効な手段になるはずであったが、ロシア財務相によれば、6400億ドルの準備資産のうち約半分が西側諸国による資産凍結のために使えない状態にある由である――中国にある人民元建ての資産を中国がどうするか注目されるが、期待は持てない。
恐らく、プーチン政権が恐れるのはルーブルの崩壊(それがハイパーインフレを惹起すれば市民生活を直撃する)のようである。ルーブルは侵攻前には1ドルが75ルーブル程度であったが、3月7日には、150ルーブルに下落したことがある。
ルーブルを買い支えようにも中銀の資産が凍結され思うに任せない。そこで、金利を引き上げた。輸出による外貨収入の80%をルーブルに転換するよう命じた。外国の投資家による株式の売却を禁じた。「非友好国」にガスの代金をルーブルで支払うよう要求しているのもルーブルの買い支え努力の一環であろう。
このような状況を見て、西側の制裁は利いているとする論評も目にする。今後、じわじわと影響が広がるのかも知れないが、目下の実体経済の状況といえば、エコノミスト誌の記事にあるように大打撃が生じている様子はないということであろう。ロシアの努力の効果であろうか、ルーブルも1ドル85ルーブル程度に戻し、侵攻前の水準に近くなっている。