2023年1月19日付のウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)の社説が、米戦略国際問題研究所(CSIS)のウォーゲーム(机上演習)で中国の台湾上陸作戦が失敗し、米国側が勝利したが、米国側にも大きなコストがかかった、弱点は埋めねばならないと述べている。
中国が台湾に水陸両用の侵略をした場合、CSISのウォーゲームのほとんどで、米国は中国の侵略を撃退した。しかし、ウォーゲームのシナリオには4つの前提条件が必要だ。
第一は、台湾の人々が戦わねばならないことだ。台湾は防衛支出を強化しているが、その徴兵制や即応体制は不十分だ。第二の条件は、武器などを事前集積して置かねばならないことだ。第三は、米国は在日米軍基地に依存できる体制になければならないことだ。第四の条件は、米国は長距離ミサイルにより中国の艦隊を早期に、かつ纏めて攻撃せねばならないことだ。
たとえ勝利をしても米国の海空軍要員の犠牲は莫大になる。報告によると、米国の犠牲は「3週間で」「イラクとアフガニスタンでの戦争の20年間の犠牲者数の約半分」にも達する。
迅速な勝利に必要な武器は有るが、その武器を十分な量調達する手立ては進んでいない。
LRASM(長距離対艦ミサイル)は、米国の犠牲を相当程度縮小できるが、問題は「全てのシナリオで、米国は2、3日で LRASMの世界保有数を使用し尽くした」ことである。
未知数は、中国軍のパフォーマンスだ。100 マイルの海域を横断せねばならない水陸攻撃作戦は難しい作戦であるが、習近平に、中国軍の情報が正確に伝わっているかは不明である。
台湾が敗退すれば問題は無くなると思う人もいるが、それではグローバル・パワーとしての米国の地位は終わりになる。米国が台湾戦争に勝つために何が必要かを米国民に伝えるCSISの報告は評価に値する。
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1月9日、CSISは、中国が2026年に台湾への陸海空軍の上陸作戦を行うことを想定したウォーゲームの結果を発表した。
WSJの社説は、かかる報告を出し国民の理解を進めようとしたCSISの功績を評価するとともに、報告は中国の攻撃は失敗したが、米国側には大きな犠牲や損害も出たと指摘し、また今後の問題点も浮き彫りになったとして、次の点を指摘する。
(1)台湾の徴兵制や即応体制を強化する。
(2)武器などを事前集積しておく必要がある。
(3)米国は在日米軍基地に依存できる体制になければならない。
(4)米国は長距離ミサイルにより中国の艦隊を「早期に、かつ纏めて」攻撃せねばならない。LRASMの調達を大幅に増大することが必要である。有益な役割を見せた攻撃潜水艦の建造を進める。
(5)米国の参戦が遅れてはならない。犠牲が増える。
(6)米国の信頼性が掛かっている。台湾戦争に中国は勝てないことを示す必要がある。
中国による台湾支配のための軍事行動は、基本的に、①周辺島嶼への攻撃ないしその占領、②台湾の封鎖、③台湾への上陸占領、のいずれかのシナリオになると考えられている。一般的にこのシナリオは、直接戦闘の苛烈さを表す度合いの順番であると言えるであろう。CSISのウォーゲームは、③のシミュレーションを一定の仮定と前提条件のもとに実施したものと理解される。