西側諸国への不信感も強いインド
ロシア製の武器のかわりに西側諸国の武器を増やす、そういった動きも顕著になっている。西側諸国からの武器輸入は、過去10年明らかに増えており、米国、英国、フランス、イスラエルからの武器輸入を合計すると(図3の青色部分)、ロシアから輸入(図3の赤色部分)を上回っている。
最近では、例えば、インド海軍の空母艦載機の選定が注目されている。過去、ロシア製のミグ29戦闘機が検討されてきた。しかし、今、米国製のF/A-18戦闘機か、フランス製のラファール戦闘機が優勢といわれている。
インドの西側諸国への配慮は、ロシアのウクライナ侵攻の際も、いくつか細かく、確認されている。その一つは、インドが、西側諸国の対ロシア経済制裁を、非難しなかったことだ。中国は、西側諸国を繰り返し非難しているから、その点で大きく違う。
また、プーチン大統領に対しては「今は戦争の時代ではない」といったが、西側諸国に対しては、何も言っていない。インドは、ロシアに配慮しつつも、今回のウクライナ侵攻はロシアが悪い、という点では、西側諸国と認識を一致しているのである。
ただ、問題は、インドは西側諸国に対しても、不信感を持っていることだ。そもそもインドは、西側諸国である英国の植民地にされていたのである。また、米国との関係が友好的になったのは過去20年で、それまでは関係が安定しなかった。だから、インドは、ロシアだけでなく、西側諸国からの武器輸入に依存することも避けたいのである。
独自の力を持ちつつあるインド
だから、インドにとって目指す目標は、国産化だ。例えば、23年1月26日の、インド共和国記念日の軍事パレードにおいては、その傾向がはっきり見えた。
例年、軍事パレードの花形は戦車だ。毎年、そのパレードにはロシア製のT-90戦車が含まれていた。ところが、今年はT-90戦車がいないのである。国産のアージュン戦車だけだ。
アージュン戦車は、装甲が厚く強力だが、巨大で、多くの問題を抱えていたため、インド軍が採用を渋った戦車だ。インド軍はT-90戦車があれば、アージュン戦車はいらない。開発した科学者たちのために、義理で少しだけ保有する、という立場だった。
ところが、今年、パレードに出たのは、アージュン戦車だけである。この傾向は22年に始まったもので、国産であることが、以前より重要になったのだ。
インドで開かれた武器の展示会「エアロ・インディア」でも、その傾向は顕著だ。国産の戦闘機、戦闘ヘリコプターなどが、主役級として出てくるようになった。インドの国防大臣も、国産戦闘機開発の偉業をほめたたえ、これからは国産であることを強調している。もちろん、どこの国でも国産をアピールするのだが、今年のアピールは、より強い。