第3次印パ戦争で、インドが、パキスタンへの攻撃準備を進めた際、インドの準備は整っていなかった。例えば、戦車の70~80%は修理中だった。だからインドはソ連に、修理部品を急ぎ供給してくれるよう頼んだ。
ソ連は、輸送機に修理部品を一杯に積んで、運んできた。輸送機は航続距離が足りず、パキスタンを攻撃するための武器の部品を積んでいるのに、パキスタンのイスラマバードに着陸して一回給油してからインドに運んだ、というエピソードがある。
このような関係だから、インドは、例え、ロシアのウクライナ侵攻が悪いことだと思っていても、ロシアのことを非難しないのである。それは日本的に言えば、義理だ。
しかし、実際には、インドはロシアに対して不信感を増幅させてもいる。そもそも、ソ連が崩壊した時、ソ連依存だったインドは、武器の調達に困った。
今度は、ロシアがウクライナを侵攻してから、インドに武器の部品や弾薬が来なくなっている。ロシア自身が戦争で武器の部品や弾薬が必要だし、西側の経済制裁で製造に支障をきたしているからだ。武器の供給者として、ソ連やロシアは信頼できなくなってきているのだ。
敵対国との関係を深めるロシア
それだけではない。ソ連とロシアは、中国に対する態度が違う。ソ連は、中ソ対立があり、中国には武器を売らなかった。しかし、ロシアになってから、ロシアは中国に武器を売るようになった。それがインドにとって懸念だ。
印中国境での衝突が起き、印中両軍が戦闘準備態勢で展開するようになって、この問題はクローズアップされ始めている。ロシアは、「インドに売っている武器の方が、中国に対して売っている武器よりも、いいものである」と主張してきた。しかし、それが真実かどうか、インドは確認できない。軍事機密だからである。
しかも、最近は、ロシアはパキスタンにも武器を売っている。これは、ロシアと中国の協力が進むにつれて、起きたことだ。
例えばパキスタンは、中国と共同開発したJF-17戦闘機と、中国製のJ-10戦闘機を導入している。この2つの戦闘機のエンジンはロシア製だ。また、パキスタン軍はロシアから戦闘ヘリコプターも輸入し始めた。
これらの取引について、インドはロシアに抗議しているが、結局、ロシアはインドの抗議を無視して、パキスタンに輸出したのである。ロシアがインドの味方なら、なぜそんなことをするのか。
だから、インドは、ロシア製の武器の導入を増やす方向性にはない。ロシア製の武器の内、100以上の部品について、インドは、技術導入を受けて国産化する計画を進めている。