2024年11月28日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年3月2日

FMNG/Gettyimages

 米ワシントン・ポスト紙は2月12日付で‘In a Hong Kong courtroom, freedom itself is on trial’(香港の法廷では自由そのものが裁判にかけられている)との社説を掲載、民主派に対する裁判を強く批判している。社説の論旨は、次の通り。

 2月6日に始まった香港での裁判にかけられた民主主義活動家は中国の指導者を真におそれさせること、すなわち投票を行った。それは正式な選挙ではなく、非公式な予備選挙であった。しかし、中国共産党とその手先はその光景を我慢できない。いま自由そのものが裁判にかけられている。

 16名の民主活動家は最高刑が無期懲役の「国家権力転覆の罪」で告発されており、既に有罪を認めた31名は裁判の終わりに判決が言い渡される。「香港47人」とも呼ばれる彼らは、2020年、その前年に起こった抗議活動の波の後、中国指導部が香港に押し付けた国家安全法で裁かれている。

 香港での如何なる協議もなしに起草され実施された国家安全法は、分離、転覆、テロリズム、外国勢力との結託を違法とするが、異論、自由な言論、報道の自由を犯罪化するために広くかつ恣意的に執行された。

 民主化勢力は2020年7月に非公式予備選を行ったが、これは非公式投票であり、同年9月の立法院選挙の前に最も支持を得そうな候補者を見つけるためのものであった。民主勢力は中国の香港に対する締め付けに反対する基盤として立法院の過半数を取ることを希望した。

 予備選挙は、北京が支持する香港の行政を揺さぶった。香港政府は世界で権威主義権力に対して立ち向かった「カラー革命」について警告を発した。予備選は違法とされた。多くの逮捕者が出て、9月の選挙は延期され、中国に忠誠心のある者だけが立候補しうるように選挙規則が変更された。

 国家安全法は香港を屈服させるムチである。それは香港、学校、メディア、立法院、裁判所を含むその諸制度に覆いをかけるものである。「香港47人」の裁判は、10年の民主化運動が喚起した希望の最終的な粉砕であり、香港の魅力であった開放性と自由へのドアが閉じられたことを示している。

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 このところ、香港の情勢が報じられることは少ないが、香港での民主主義を押しつぶす中国の強権的政策は続いている。ワシントン・ポスト紙が、2月6日に始まった、いわゆる「香港47人」の国家安全法に基づく裁判を社説で取り上げたのは良い判断である。

 この裁判は「香港47人」が国家転覆をしようとしたということで行われているが、彼らがしたことは2020年9月に予定されている立法院選挙の候補者を決めるための人気投票、予備選挙であり、いわば選挙運動の一過程に過ぎない。それがなぜ国家転覆罪になるのか、全く不可解である。その後、愛国者による香港統治ということで、中国に忠誠心のある者だけが立候補できることになった。その後、恣意的な立候補資格審査がなされた。


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