派遣する大臣のランクを下げることの意味
この欠席が深刻な影響を与える可能性がある理由は3つある。まず、インドがG20に本気で努力していることだ。
インドはG20議長国として、今年50以上の都市で200以上のイベントを開催する。その中で外相会談は9月の首脳会談を除けば、トップクラスの目玉だ。
その目玉である外相会談を、日本だけが欠席し、それが世界的に大きなニュースになってしまったら、どうなるか。インドが本気で取り組んでいる会議にはでなくていいと、日本はメッセージを送ったことになる。本気で取り組んでいるからこそ、世界の前で欠席されたことは、インドのプライドを深く傷つけるだろう。
次に、新興国全体を下に見ているように受け取られることだ。今年日本はG7の議長国だ。だから、G7の成功を狙う。しかし、世界情勢におけるG7の影響力は、かつてに比べ大きく下落している。だから、G20という発想がでてきたのである。
G7に新興の影響力ある13カ国を加えて会議を行うのである。ところが、日本がG20には1ランク下げた大臣を送るならば、どのようなメッセージを送るだろうか。
G7は大事だけど、残りの13カ国は大事ではないというメッセージを送ってしまう。実際の世界の現状はそうではない。G7だけでは足りないから、最近、G7各国は、G7以外で力をつけつつある国をゲスト国として呼び、G7とそれらの新興国を合わせて、会議を行うのである。
日本もG7にゲスト国としていくつかの国々を呼ぶだろう。日本自身が送る大臣のランクを下げたのに、これらの新興国は応じてくるだろうか。日本は注意すべき部分である。
第三に問題なのは、中国の外相は出席することだ。今年、インドは、G20の議長国というだけではなく、上海協力機構の議長国でもある。しかし、インド軍は、印中国境で中国軍と戦闘準備状態でにらみ合ったままだ。
そのような中で、インドは中国に対し、厳しい姿勢で臨んでいる。だから、日本や米国との協力関係を深め、昨年後半には、米軍を印中国境近くに受け入れて共同演習も行い、今年に入ってからは、日印共同演習が1月から3月まで4回(陸1回、海1回、空2回)も行っているのだ。
日本がインドに派遣する大臣のランクを下げたら、どうなるのか。インドは日本に興味があるが、日本の方はインドに興味ないかのようなメッセージを送ることになる。それが日本にとって国益になるのか、大いに疑問だ。