2024年4月22日(月)

教養としての中東情勢

2023年3月7日

 米国が危機感を高めたのは国際原子力機関(IAEA)が2月末に公表した報告書が衝撃的だったためだ。1月にイラン中部フォルドゥの地下核施設で採取したウラン粒子が濃縮度83.7%と核爆弾に使用される濃縮度90%に迫るものだったのだ。バイデン政権のイランに対する疑念は急速に高まった。

 カール国防次官の「イランの核開発が異例の進展を見せ、12日間で核爆弾一個分の核分裂性物質を製造可能」という発言が政権の統一的な見解になった。核合意ができた2015年当時は核爆弾製造までには「1年」だったものが、一気に短縮したわけだ。「武力による核開発阻止もやむなし」との議論が浮上している所以だ。

抜き打ち査察がポイントに

 こうした事態を受け、IAEAのグロッシ事務局長がこのほど急きょイランを訪問、ライシ大統領やエスラミ原子力庁長官と会談した。イラン側は検知された83.7%のウラン粒子について「濃縮レベルの偶発的な変動」と説明、意図的に製造したものではないとして、核兵器製造計画をあらためて否定した。

 事務局長によると、イラン側は査察の強化と監視カメラの再設置に同意したという。しかし、ニューヨーク・タイムズによると、イラン側は昨年11月、IAEAの査察官に対し、ファルドゥの地下核施設で核爆弾級の濃縮ウランを製造する計画であると明らかにしており、「偶発的な変動」という説明には大きな疑問が残る。

 ハメネイ師をも動かす影響力を持つ革命防衛隊は核合意に復帰すれば、せっかく製造した濃縮ウランのほとんどを国外に搬出しなければならないことを恐れており、「決断した時にはすぐに核兵器を製造できる選択肢を確保しておきたい」との考えが強いとされる。

 核合意では本来、イランは濃縮度3.57%を超える濃縮ウランは製造できないことになっていたが、米国のトランプ前政権が合意から一方的に離脱したため、合意破りに踏み切り、21年には濃縮度60%のウラン製造を開始、現在はそのレベルの濃縮ウランを約90キログラム保有しているとされる。「偶発的な変動」という説明が本当かどうかはイランが今後、IAEAの「抜き打ち査察」をすんなり認めるかにかかってくるだろう。

裏でロシアと〝交渉〟か

 イランが核合意再建交渉を見限った大きな要因の一つはロシアとの関係強化を推進するという戦略的な決断がある。イランには「西側、東側とも同盟は組まない」という革命時の最高指導者の「ホメイニ・ドクトリン」があったが、これを反故にしてロシアに急接近した。イランとロシアはともに国際的な制裁を受ける立場にあり、米国の敵同士がくっついた格好だ。

 特にロシアのプーチン大統領が昨年7月にテヘランを訪問後、「前例のない軍事協力」(米高官)が強まった。イランは〝カミカゼ・ドローン〟と呼ばれる自爆型無人機「シャヘド136」のロシアへの供与を開始、米紙によると、最近では戦車砲弾や実弾も売却している。


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