ここまでオープンにしてしまっていいのかと思うほどだが、共同計画がないのであれば、早急に策定し、計画に基づいた様々な場面の訓練を見せることで、日米の本気度を示す必要がある。それは中国に対する抑止力を高める情報戦でもあるからだ。中国が台湾統一を目的とする武力の行使を放棄するまで、根気強く繰り返さなければならない。
誤算が生じるリスクを排せ
ロシアによるウクライナ侵略は、専制主義国家に対する抑止力確保の重要性を改めて確認させた。同じことは中国にも当てはまるだけに、有事を回避する処方箋は、対中抑止力の強化しかない。だが、厄介な問題がある。それは今年1月に米下院議長に就任した対中強硬派とされるマッカーシー氏(共和党)が訪台の意向を示していることだ。
昨年8月にペロシ下院議長(当時)が訪台した際、中国は即座に報復措置として、「重要軍事演習」を実施、台湾を取り巻くように航行禁止区域を設け、たて続けに9発の弾道ミサイルを発射した。このうちの5発が沖縄・先島諸島の周辺に広がる日本の排他的経済水域(EEZ)に着弾した。米議会の要職が2年続けて訪台することになれば、中国の激しい反発は必至で、軍事的な威嚇行動がエスカレートし、偶発的な衝突も危惧される。
これは中国への遠慮ではない。東アジアの安定を脅かす行為であり、日本の国益を損なう事態となるからだ。
報道によれば、ペロシ氏の訪台について、米国防総省は台湾海峡の緊張を高めかねないとの理由から反対したと伝えられている。地域の安全保障を担う見地から真っ当な認識だ。現時点の情報では、早ければ4月にも台湾の蔡英文総統が訪米し、米西海岸でマッカーシー議長と懇談する方向で米台間の調整が進んでいるとも聞く。
予断は許さないが、「あんなことさえしなければ」――。そうした後悔を生まないためにも、〝誤算〟を引き起こしかねない行動を慎むよう、政府は米政権に対して求め続けていくことも肝要だ。無益な挑発はしない。これも有事を回避する処方箋である。
今年8月のペロシ米下院議長の訪台に、中国は大規模な軍事演習で応えた。「台湾有事」が現実味を増す中で、日本のとるべき道とは何なのか。中国の内情とはいかなるものか。日本の防衛体制は盤石なのか。トランプ政権下で米国防副次官補を務めたエルブリッジ・コルビー氏をはじめ、気鋭の専門家たちが、「火薬庫」たる東アジアの今を読み解いた。
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