日本政府は、これまで国内総生産(GDP)の1%に抑えられていた防衛費を北大西洋条約機構(NATO)諸国が目標とする2%に増額することを決定した。これに合わせて、増加分を税で調達すべきか、国債で賄っても良いのかの議論が盛んになっている(例えば、「防衛費財源、国債か増税か 政府内二分「首相はセンスない」怒号も」毎日新聞2022/12/13)。
現在の防衛費増額は将来の国民のためでもある
筆者は、防衛費が将来の国民を守るためのであるなら、国債で負担しても良いはずだと思う。そもそも、戦時には愛国国債が発行され、戦費が国債で賄われる。愛国国債より軍事公債が正式名称だが、戦時国債を買うことは愛国心の発露とみなされていた。
日清戦争では戦費の30.7%を日銀からの借入金で、20.0%を公債で賄う計画だった(小野圭司『日本戦争経済史 戦費、通貨金融政策、国際比較』日本経済新聞出版社、2021年、表4-2、109頁)。日露戦争では、内債で42.4%、外債で40.1%、合わせて82.5%を借金で賄うこととされていた(同表5-6、143頁)。
日華事変から太平洋戦争の戦費は、公債金で61.4%、現地通貨借入金で24.5%を賄った(同表7-6、216頁)。現地通貨借入金とは、日本が占領地でお札を刷ってそれで戦費を賄ったということである。日本の刷ったお金は無価値になったから、現地でお金を借りて踏み倒したのと変わらない。
今までも借金で賄ったのだから、今回も借金で賄えば良いと言ったら、日清日露の戦争では、実際に戦争したときに借金で賄っているのであって、軍備増強の時には借金をしていないという反論があるだろう。