2024年11月27日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年3月31日

 また、スナクとマクロンが共に投資銀行に勤めた共通の経験があり、政治的にも中道右派で親和性があったことなどが、この和解を容易にしたのではないか。

 EUからは離脱したとはいえ、英国は北大西洋条約機構(NATO)においてEU諸国の重要な同盟国であり、ロシアの侵略攻撃が続く中でウクライナ支援のためのNATOや西側の団結の維持が不可欠であることから、今回の英仏間の和解は極めて明るい話題であり、特にEUとの協力関係を必要とする英国にとって朗報であろう。

 英仏首脳会談では、移民問題が焦点となり、スナクが、フランスが英仏海峡を渡ろうとする難民を阻止する支援に3年間で5億8000万ドルの拠出を表明し、これをマクロンが責任の共有化を示すものと評価した。他方、マクロンは、英国が求める難民をその出発地に送還する協定については、EUと交渉すべきとの立場で応じなかった。

 マクロンは、EUの主権や戦略的自律を強調する一方、安全保障や政治協力ではより広い欧州の枠組みを模索しており、その主要な狙いは英国やEUに非加盟の欧州諸国の取り込みである。また、マクロンにとって、対米関係においても、英仏和解は有益であろう。

英仏間の火種は残る

 もっとも、これで違法移民の流れが止まるとは思えず、引き続き火種は残るであろうし、この社説が推奨しているEUの科学技術振興策である「ホライズン・ヨーロッパ」への参加について、スナクは費用対効果の面で慎重である。

 また、2国間関係を首脳の個人的な関係に頼ることは政権が交代した場合に友好関係が引き継がれないリスクがある。特に、スナクは与党内対策も油断はできないであろう。他方、マクロンは、年金改革で無期限ストに直面しており、これを乗り切る必要がある。

 2国間の和解を持続可能にするように、追加的な法的、政治的枠組みが構築されると共に、この社説が期待するように、英国との和解の動きがドイツやEU諸国全体に波及することが更に望ましい。

 成熟した民主主義国の隣国同士が、懸案事項にも拘らず良好な関係を築くことは喜ばしく、英仏両国が国連安保理事国であり、またG7(主要7カ国)のメンバーであることからもグローバルにも良い影響が出ることを期待したい。

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