2024年4月29日(月)

日本の医療〝変革〟最前線

2023年4月5日

 第3位が老衰。15万2024人で10.6%である。老衰死は2000年には2万1209人にとどまり、全体の2.2%で第7位と低位だった(図3)。それが、15年には第5位に、19年には第3位へと上昇してきた。

 人口動態統計による最新のデータによると22年は10月までに14万4737人となお増え続けている(図4)。とりわけ注目したいのは、コロナ禍での増勢である。

 新型コロナウイルスの第4波、第5波に見舞われた21年は全死者が143万9856人で前年より6万7101人増えた。この中で、死因別で前年より最も増えたのが老衰であった。1万9587人増だ。翌年になると、10月までに前年同期より2万人以上も増えており(図5)、この趨勢が続くと2年後には心疾患を上回り第2位に浮上しそうだ。

 延命治療よりも自然死を選択する日本人が増えてきた。「何かあればすぐに病院へ。そこで徹底的に治療を」という従来の思い込みが変わってきた。

場所は自宅ではなく、施設の傾向

 21年に亡くなった145万人のうち、高齢者施設での死亡者は13.5%なのに、老衰死に限ると高齢者施設での死亡者は7万2579人で47.7%に達している(図6、図7)。高齢者施設での老衰死は07年には6976人だったから、この14年の間に10倍にも増えた。比率では22.7%から47.7%へと2倍以上だ。

 一方、病院や診療所の医療機関で死亡した割合は、死亡者全体では 67.4%なのに対し、老衰死だと32.9%に下がる(図6、図7)。 加えて、自宅での老衰死の比率も下がっている。自宅での自然な「看取り」が映画や書籍で「納得できる死に方」として頻繁に描かれるが、実数はあまり増えていない。

 一人暮らしや老々介護世帯が増加し、家族に依存できなくなったことが大きい。在宅看取りには、まだ医療・介護サービスが足りない。訪問診療や訪問看護、それに介護保険の在宅サービスを利用しようにも、地域での普及度の格差は大きく誰でもがすぐに活用できるとは言い難い。


新着記事

»もっと見る