2024年11月25日(月)

Wedge REPORT

2013年7月23日

 各電力会社は新規制基準への適合が義務付けられることとなった。設備を増強するだけでなく、福島第一原発事故の教訓を踏まえ、事業者の継続的な安全向上義務も盛り込まれているのが大きな特徴である。電力会社は既に新規制基準への適合対策を進めている。対策が整った発電所から順次、新規制基準適合の確認を国に申請し、国の安全審査手続きが開始される。これが再稼働の大きな関門となる。野球の試合に喩えれば、中断中の試合を以前と同じルールのもとで再開する、というのではなく、完全に新しいルールのもとで初回から試合をやり直すようなもの、商店で言えば“リニューアル・オープン”のようなものである。

 昨年の東京電力に続き今年は各地の家庭用電気料金が引き上げられた。関西電力は平均で約10%、九州電力は平均で約6%である。代替電源として稼働させた火力発電所の燃料費が大きく経営を圧迫しているためである。

 この追加の燃料費は毎年増加しており、2013年度も現状のまま原発停止が続くと年間3.8兆円超に達すると見込まれている(グラフ参照)。

 今、原子力規制委員会に求められている役割は、新規制基準に適合した原発を一刻も早く稼働させるべく、安全審査を急ぐことである。無い物ねだりしているのではない。

原子力安全基盤機構との統合が急務

 現在の原子力規制委員会は専門性が欠如し、人数が不足していると言わざるを得ない。昨年6月に施行された原子力規制委員会設置法に明記された、原子力安全基盤機構(以下、JNES)と統合し、その専門家を活用すれば安全審査のチーム編成を2~3倍に増やすことも可能なはずである。運転再開が遅れれば遅れるだけ日本経済の再生が遅れると言っても過言ではない。審査のスピードアップ化が喫緊の課題と認識すべきである。

 原子力規制委員会の最大の使命は原子力に対する国民の信頼回復である。最新技術知見に基づく基準作成や科学技術的見地からの評価、審査を進めることが必要であることは当然として、それ以上に重要なことは原子力規制委員会の考え方を国民や立地地域の住民に対して分かり易く、丁寧に説明することである。

 事故前の国の仕組みに欠けていたのはその説明姿勢である。残念ながらこれまでの原子力規制委員会の取り組みにはその姿勢が窺えない。規制行政の透明化と説明責任の履行が規制基準の作成・安全審査に負けず劣らず重要であることを再認識すべきである。


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