2024年11月25日(月)

Wedge REPORT

2013年7月23日

 特に活断層調査の問題に関する説明が不十分である。日本原子力発電敦賀2号機の敷地にある「破砕帯」は、以前の国の審査では活断層でないと認めていたにも関わらず、今回の審査では活断層だと判定した。過去の判断をなぜ覆したのかの説明が全くないのでは当事者の日本原電や地元自治体の納得が得られないのは道理である。原子力規制委員会は科学技術的な根拠をもって判断したと信じたいが、「今回の有識者会議がそう判断したから」という説明だけでは到底、説明責任を果たしたとは言い難い。

 有識者会議の中には、東京の立川断層の評価の際、昔の工場の基礎杭を活断層の痕跡だと誤認し、「断層を見つけたいという強い思いがバイアスになって、見たいものが見えてしまった」と弁解した専門家も含まれている。原子力発電所の廃炉に繋がる重要な評価でまさか見たいものが見えてしまったとは思いたくないが、活断層の判断基準があいまいなことが問題の根底にある。活断層の判断基準を客観的に明確化し、属人的判断基準を極力少なくする取り組みが求められる。

必要な工学的判断とリスクガバナンス活用

 米国カリフォルニア州も地震が多いことで知られている。そのカリフォルニア州にあるディアブロキャニオン原発の近傍にサンアンドレアス断層の副断層と疑われる断層が見つかり、運転継続の是非を巡り問題となったことがある。結局、工学的な解析によって、その断層が動いたとしても原発の安全性が保たれることを確認して決着し、現在も稼働している。

 我が国は地震関連の解析技術や工学技術に関しても世界一である。地震の問題を活断層の専門家の意見だけでなく、工学的な解析も取り入れて判断することを提言したい。

 また、科学技術のリスク判断が課題になっているのは原子力分野だけではない。医療分野、食品分野、航空機分野など科学技術を利用するほとんど全ての分野にリスク問題は存在する。そしてリスクにどう向き合うかを考えるリスクガバナンスが一つの学問分野として様々な分野で取り入れられている。活断層問題もまさにリスクガバナンスの問題である。科学者、工学者だけでなく、リスクガバナンスの専門家の知恵も活用することを提言したい。

 上述した日本原子力発電敦賀2号機の地盤評価に関する有識者の選定には疑問がある。今回の審査に当たる有識者の選定に際し、国は「過去の国の審査に加わった専門家を排除」して人選を進めた。その結果、活断層肯定側の専門家が多数を占め、過去の国の結論を覆す結論となった。

 むしろ積極的に過去の国の審査に加わった専門家も加え、新知見を持つ専門家と正々堂々と公開の場で意見を交わした上で国の意見を変えるなり維持するなりの結論を得るべきでなかったのか、再考を要する問題である。


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