2024年4月20日(土)

World Energy Watch

2023年4月12日

規制料金は何故値上がりするのか

 家庭が使っている電気の料金には2種類ある。16年の家庭用電気料金自由化以降、新電力と呼ばれる電力の小売りを行う会社が設立された。消費者は新電力あるいは以前からある大手電力と呼ばれる東京電力、関西電力などの地域の電力会社から自由化された料金で電気を買うこともできるようになった。電力会社は自由化された料金を自由に設定可能だ。

 一時、テレビ、インターネットでも電気小売りのCMが多く流された。新電力と呼ばれる会社の多くは発電設備を持っておらず、電力の卸市場で調達した電気を小売りしている。

 市場価格での仕入れ額に差がないので、顧客数が多くなれば薄利多売で利益額を伸ばすことができる。ケーブルテレビ、私鉄などエネルギービジネスとは関係がなさそうだが、大きな顧客ベースを持つ企業も電力小売り事業に参入した理由だ。しかし、燃料費の値上がりによる卸市場の高騰があり、採算が悪化した新電力の中には撤退する企業もあった。

 消費者は選択肢が増えたが、約半数の家庭は、自由化料金を選択していない。自由化料金を選択しない家庭は大手電力が提供する規制料金で電気料金を支払っている(「上がり続ける電気料金 節電要請では抑えられない」)。

 規制と呼ばれる理由は、16年の自由化以前の家庭用電気料金には、総括原価方式と呼ばれる原価に適正利潤(資本調達コスト相当)を加えた料金しかなかったからだ。規制料金は依然申請に基づき経済産業省により査定を受ける。

 規制料金が自由化以降も残っている理由は、消費者保護のためとされている。経済産業省が原価に基づき査定するのであれば法外な料金になるはずはない。

 この料金の値上げ申請の率を巡る報道が最近増えているのは、欧州発のエネルギー危機により化石燃料の価格が上昇し、発電の原価が上昇しているからだ。日本の電気の約3分の2は、石炭、液化天然ガス(LNG)を利用する火力発電により供給されている。石油を合わせると日本の電気の約4分の3は化石燃料に依存している。そのため欧州発のエネルギー危機の大きな影響を受けた。

どうなる規制料金の値上げ

 ロシアへの化石燃料依存度が高かった欧州諸国でのエネルギー危機は日本にも及んできた。年末からの欧州の暖冬と欧州市民の節エネ努力により天然ガス価格、石炭価格は下落しているが、エネルギー危機前の状況までは下がっていない(図-1)。

 日本企業が購入しているLNG価格も下落したので、燃料費が下がり電気料金の卸価格も下がった。このため、料金査定では燃料費と為替の影響などを勘案し再算定が行われた。例えば、東京電力のモデル料金では、申請時の1万1737円が1万684円となり現行の9126円から17.1%の値上げとなった。


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