2024年11月22日(金)

World Energy Watch

2023年4月12日

 規制料金の値上げ幅が圧縮されるように見えるし、新聞もテレビもそう報道した。さて、毎月の電気料金は直近3カ月平均の燃料費の変動を反映している。要は、燃料費の基準価格からの乖離分が料金に反映される。燃料費が下がる場合には下限はないが、上限は基準燃料価格の1.5倍だ。

 大手電力の大半が赤字になっている理由は、この上限価格だ。今の燃料費は上限価格を超えているので、電気料金として燃料費をすべて回収できず、電力会社が負担している。これが、規制料金を値上げする理由だ。

 毎月の電気料金は過去3カ月平均の燃料価格に基づき見直しが行われるので、燃料構成の見直しによる変動分を除くと、基準価格がいくらであろうとも、影響はない。

 料金が異なるのは、平均燃料価格が基準価格を1.5倍以上上回る時だ。そうなれば、値上げ幅が圧縮され見直された基準価格では上限値に早く到達する。

再エネ賦課金額は下がったが

 再エネ導入を支援するため、電気の消費者は固定価格買取制度(FIT)に基づき電気料金の再エネ賦課金額を負担している。この負担額が、今年度毎月820円下落すると報道された。

 昨年度まではモデル世帯の電力使用量は月260キロワット時(kWh)だったが、今年度から400kWhに変更された。家計調査の標準世帯の使用量に合わせて変更したと説明されているが、今までも家計調査の数字は発表されていた。変更により使用量が増えたことで、減少額は533円から820円に増えた。

 電気料金が820円下がるように取れるが、そうではない。再エネ賦課金は、再エネ設備からの電気の買取総額から回避可能費用を差し引いて計算される。回避可能費用とは、簡単に言えば再エネが発電すれば火力発電の発電がその分不要になり、節約できた燃料費だ。節約できた燃料費を買取額から差し引き消費者の負担額を求める必要がある。

 燃料費が大きく上昇したので、その分差し引く金額も大きくなっただけだ(図-2)。要は、賦課金額の負担は減ったが、再エネの買取総額が減ったわけではない(図-3)。

 12年のFIT導入以降再エネからの発電の買取に使用された資金は、昨年9月時点で約23兆円だ。今後も再エネ設備が増加するので、減ることはない。FIT対象の買取金額が減少を始めるのは10年後、30年代前半の見込みだ。

中国にインフラを買われてはいけない

 4月1日の値上げ申請の審査は長引き、値上げ実現は早くて6月1日になりそうだ。電気料金が値上がりすれば、消費者が影響を受ける。厳正な審査も当たり前のことだろう。

 今燃料費の回収ができない大手電力では、中部電力を除く9社が赤字の見通しだ。必要な投資も最小限に絞らざるを得ないだろう。政府は、インフラ企業が必要とする費用を早く認める必要がある。消費者保護の最も大事な政策は、高騰する物価を賄えるだけの給与増を実現することだろう。


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