2024年7月22日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年4月19日

 この社説は旧ユーゴ国際刑事裁判所がセルビアのミロシェビッチを裁いたことを一つの例として言及しているが、旧ユーゴ国際刑事裁判所は安保理の決議によって設立されたものであり、常任理事国で拒否権を持つロシアの指導者を裁く裁判所が安保理決議で設立されることは全く考えられない。

 そこでウクライナの裁判所がプーチンらを裁くことにし、判事や検事には外国人も起用する国際的特徴を備えた特別裁判所を作ることが提案されている。一つの有効な方法であると思われる。現地の司令官や兵士の戦争犯罪を追及するが、そもそも戦争を始めたプーチンを追求しないのでは不公正である、というのはよく理解できる考えである。

 しかし、国家元首は他国の裁判で訴追されないという特権免除があり、これを実際に実施するのは相当に高いハードルを越える必要がある。社説が言うように引退後のプーチンを追及するということにしかなりえないと思われるが、それでも意味はあるだろう。

休戦のインセンティブが低下する恐れも

 ただ、そういう意図を事前に公にすることがロシアのウクライナ戦争をやめさせるためにどれほど効果があるかは慎重に考える必要もあると思われる。ウクライナ戦争はロシアも西側も第3次大戦にはしたくない、核戦争にはしたくないということで、制約された戦争(Limited War)として戦われているものである。この戦争後に、ニュルンベルク裁判や東京裁判のようなことがあるというのなら、ロシアがウクライナ戦争をやめるインセンティブは小さくなるだろう。

 ウクライナ戦争は休戦協定で終わらせるしかない。休戦ラインの問題にする方がよいと考えられる。

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