トランプ訴追が24年大統領選挙に及ぼす影響は?
以上述べてきたように、米国の陪審制度は個人を公権力から守るという観点が貫かれている。仮に、非理性的な判断がなされることがあったとしても、また、時に法律を破ってまでも、統治機構が暴走して人々の権利を抑圧するのを防ぐのが陪審制度の目的なのである。
そして、陪審を含む米国の刑事訴訟の手続きは思いの外複雑である。先ほど指摘したとおり、今日の米国では公判を行わずに司法取引で処理されることが多くなっている。
今後、トランプがいくつの訴訟案件を抱えることになるかは現時点ではわからないが、トランプは無罪を主張して公判に臨むものと思われる。そして、陪審員の選定等が長引けば、2024年大統領選挙までに訴訟が終わらない可能性は十分に考えられる。大統領経験者の訴追は例がないこともあり、今後もメディアの注目が集まるだろう。
この状況は、ある意味トランプにとっては都合がよいといえる。16年大統領選挙の際、トランプは過激な発言を繰り返すことでメディアが注目せざるを得ない状況を作り出し、事実上メディアをジャックした。
トランプは24年大統領選挙への出馬を宣言しているが、24年大統領選挙についても同様の状況となることが想定できる。トランプに対する共和党支持者の支持率は、訴追以後に高くなったようである。だが、本選挙でカギとなる無党派層がトランプを支持しているわけではなく、本選挙でトランプが勝てるかはまだわからない。
トランプへの訴追が大統領選挙にどのような影響を及ぼすかにも注目したい。
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