原島は答える。
「経理部から始めたので、領収書が目の前を通り過ぎたのをみただけですね」
部屋の時計が午後2時となる。
「定例の会議ですから失礼します……そうか……」
立ち上がった原島に、弁護士が言葉をかける。
「会議はもう…」
俳優としての新境地を切り開く東山
原島の会社が下請けに発注したネジが強度不足で、鉄道や航空会社に納入している座席の背もたれが支えきれなくて壊れて、すわっている人が怪我をする可能性が浮かび上がる。
あまり日の当たらない課長ポストから、花形の営業1課長に異動した原島が、部長からネジの発注元を変更するように特命事項として命じられ、大阪の零細企業などを回るうちに、強度不足に気付いていく。
顧客の苦情窓口であるカスタマー室長の佐野健一郎(豊原功補)も苦情の分析から、同じ結論に達する。佐野は中途入社で、営業の花形部署から左遷された男である。
原島と佐野のふたりは、いったんは協力して、強度不足のネジが納入されたいきさつを探ろうとする。その途中で佐野は、この件を利用して左遷の原因となった上司の責任を問い、再び主流の道に戻ろうと、社長の宮野和弘(長塚京三)をはじめとする経営層に告発文を送る。
しかしながら、宮野の部下に対する指示は「この件、隠蔽せよ」であった。
原島はこの企業犯罪を食い止めることができるのだろうか。あるいはその罪の一端を担わされるのであろうか。
企業を舞台としたサスペンスのなかで、課長役の東山は俳優として新境地を切り開いている。頭にはうっすらと白髪がのぞく。老眼鏡と思える眼鏡がちょっとずり落ちる。
回収不能になった5億円の責任を
押しつけられた半沢
「半沢」のドラマの底流を流れているのは、息苦しい復讐劇の主音調である。