2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年5月12日

 4月10日付の英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)で、同紙外交問題コメンテーターのギデオン・ラックマンが「なぜ台湾が世界にとって重要なのか。北京との緊張の危険な増大は、繁栄するアジアの民主主義を保護するために支払う価値のある代償である」との論説を書いている。

(Tanaonte/gettyimages)

 台湾への軍事圧力の増大に対し、バイデン大統領は4回、米国は中国の攻撃から台湾を守ると約束した。米国の一部の人は、なぜ米国が人口2400万人の台湾を守るために、もう一つの核兵器国中国と戦うのかと疑問に持つ。

 台湾を守ることへの懐疑論は欧州の一部ではもっと強い。訪中から帰ったマクロンは台湾を守るためにフランスは指一本あげないと含意した。

 台湾にこだわる三つの主たる議論がある。第1は世界での政治的自由の未来について、第2は世界的なパワーバランスについて、第3は世界経済についてである。これらは台湾を北京の手から離しておく説得力のある議論になる。

 北京は既に香港での民主主義を粉砕した。習近平が台湾で同じことをすれば、世界は暗い政治的意味を持つ。

 もし中国が台湾の自律を侵攻により、または台湾が欲しない政治連合の強制で粉砕すれば、地域における米国のパワーは大きな打撃を受けるだろう。

 中国によるインド太平洋の支配は世界的意味をもつだろう。この地域は世界の人口と国内総生産(GDP)の約3分の2を占める。もし中国がこの地域を支配すれば、中国は最強国として米国にとって代わるだろう。

 台湾は世界の半導体の60%以上、最も先進的なものの90%を生産する。電話や車から工業機械まで台湾のチップで動いている。もし台湾の半導体工場が中国の支配下に入れば、中国が世界経済を牛耳ることを可能にする。

 これら経済的、戦略的、政治的考慮は、米国とその同盟国が台湾を守る説得力ある議論となる。戦争に備えることが平和を維持するために時には必要である。

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 この台湾の重要性に関するラックマン論説は、よく考えられた論説であり、賛成できる。


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