2024年11月22日(金)

世界の記述

2023年5月10日

 今回、4月15日に始まる武力衝突は、国軍と民兵組織の主導権争いがきっかけだ。この民兵組織はダルフール地方で政府軍の代わりに住民殺害、レイプを繰り返してきたアラブ系民兵、ジャンジャウィードが前身で、13年からは「即応支援部隊(RSF)」と名乗っている。頭のRはRapidで、皮肉なのか駐留米軍の緊急派遣部隊(RDF)と同じである。

 スーダン内戦は軍のクーデター、国軍・政府の圧政、住民反発、クーデターという負のサイクルを繰り返してきた。今回は19年のバシール独裁崩壊後、ブルハン将軍が21年10月にクーデターで実権を握り、民政に戻るかどうかの過程で起きたものだ。

アフリカ内紛の歴史から見た今回の内紛

 内紛がつきものというイメージが残るアフリカだが、世界を騒がす戦争は久しぶりのことだ。

 サハラ砂漠以南という地域カテゴリーに当てはまる48カ国で、権力をめぐる内紛が現在起きているのは、スーダンと中央アフリカ共和国の2カ国だけである。コンゴ民主共和国でも内紛は続いているが、90年代後半のような全土での戦いはない。

 筆者が南アフリカを拠点にサブサハラを回っていた1995年から2001年と比べれば違いは歴然としている。当時の内紛国は8カ国に上り、常に戦闘が続いていた。

 これらに準じ、一時的に武力衝突を起こした国は7カ国だったため、計15カ国で武力衝突があったことになる。 

 一方、現在の内紛国はスーダン、中央アフリカの2カ国で、それに準ずる国を入れれば計11カ国となる。ただし、ほとんどの国の問題はイスラム過激派など外部勢力からの脅威であり、これらを外せば、内紛国は3カ国にすぎない。

 それを前提とすれば、内紛国は15から3カ国へ激減しており、サブサハラは過去20年で劇的に落ちついたと言える。

 では、今回のスーダン内紛にサブサハラ全域を脅かす新たな要素はあるのか。

 スーダン国軍と対立するRSFがロシアの民間軍事会社「ワグネル」から武器を提供され訓練も受け、そこに金鉱山の利権がからんでいるとの情報がある。だが、そこに目新しさはない。

 90年代のアンゴラ内戦やシエラレオネ内戦に、ダイヤモンド利権をめぐって南アフリカの傭兵組織、エグゼクティブ・アウトカムズ(当時)が関与していたのは周知の事実だ。当時のトップを筆者は直接インタビューしている。

 また、コンゴ内戦の渦中、外国人が首都キンシャサに留め置かれる中、再開した空港に南アフリカ航空のチャーター機で真っ先に乗り込んできたのが、非鉄企業、アングロ・アメリカン(英国)の幹部だった。彼らが早々に、政権を握ることになる反政府勢力と交渉したのを、筆者はこの目で確認している。

 内紛国に民間軍事組織や大手企業ら外来者が関わるのは、60年代のチェ・ゲバラによるコンゴ介入失敗以来続いてきた古くて新しい事象だ。民間人が利害で紛争地に関わる問題は、アフリカで大きくは改善されたわけではない。


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