2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年5月23日

 ヤーヤーは22歳という高齢で、かつ皮膚病にも感染しているという。健康の衰えは仕方がないようにも思うが、ネットのおもちゃとなる〝面白さ〟があるのは米国による虐待ネタなのだから、冷静な指摘など広がるはずもない。

 そして、中国のメディアも虐待について、表だっては触れないものの、痩せこけたヤーヤーが中国に戻っておいしいエサをもらいました、祖国の懐に抱かれ元気な姿に戻りつつあります……などと、ネットの炎上を助長するような角度で取りあげている。

 こうした大炎上したネタの陰には、ボヤで止まったネタが無数に眠っているという。映画『THE FIRST SLAM DUNK』(ザ・ファースト・スラムダンク)は中国で興行収入6億元(約120億円)を超えるヒットを記録。原作者、監督の井上雄彦氏は中国語で感謝のメッセージを送ったが、「CHINAのHの文字だけ色を変えている。Hを外せばCINAという蔑称になることを意図している」といういいがかりを付けられた。

 ウェブメディア「Smart Flash」はこの件が「大炎上」したと報じたが、中国のソーシャルメディアを見るとあまり燃え広がらなかったようだ。中国の知人に聞いても、この一件を知っている人はいなかった。

日本とはまた異なるネット言論対策

 ボヤで治まったのはなぜか。無理筋のいいがかりだから……とは言い切れないのではないか。Miniのアイス事件、ヤーヤーの虐待問題も似たり寄ったりではないか。

 もし違いがあるとすれば、ネットのおもちゃになる〝おもしろさ〟があるか、ビジュアルのインパクトがあるかといったところだろうし、あるいはたんなる運不運の要素も大きいだろう。

 こうした炎上は元をたどればしょうもないことがほとんどだが、その影響は甚大だ。一人の人間の人生が狂うこともあれば、会社やビジネスに大損害を与えることもある。

 ネット時代において、民主主義国家では「言論の自由を守りつつもフェイクニュースや誹謗中傷にいかに対応するか」が課題だが、中国では「政府批判や社会問題への言及は全力で封殺しつつも、怪しげな海外批判や外資叩きは自由、官制メディアまで乗っかることも」という状況だ。強大無比な検閲能力を持っていながらも、中国共産党が無関心な分野は無法地帯という、大変に困ったソーシャルメディア環境となっている。

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