今後の行方は?
債務上限問題をめぐって、民主党のバイデン大統領と、共和党のケビン・マッカーシー下院議長を中心として交渉が継続されている。米国債がデフォルトに陥ると米国経済のみならず世界経済が大混乱になることは理解されているため、何らかの妥協により債務上限を引き上げるべきだと考えられているが、妥協は容易ではないようである。
問題は、仮に政権と共和党の代表者が妥協案を作ったとしても、二大政党共に、それを良しとしない議員が存在することである。とりわけ共和党側は、フリーダム・コーカスに集う強硬派が非妥協的な態度をとっている。
彼らは徹底的に小さな政府の立場をとるティーパーティー派の流れをくむ人々である。ティーパーティー派はオバマ政権期の2011年の債務上限危機の際にも非妥協的な態度をとり続けていた。
彼らは、マッカーシーの下院議長就任を妨害し、下院議長選出のための投票を15回も行わせた人々だが、その過程でマッカーシーは、下院議員一人でも議長解任を求める決議を提出できることに同意せざるを得なかった。したがって、ティーパーティ派が納得できない妥協案が作られた場合、マッカーシーを引きずり降ろそうとする可能性も指摘されている。
他方、バイデン大統領はデフォルトを回避するために共和党の求める支出削減にある程度応じる意思を示している。だが、仮に共和党がバイデン政権と民主党多数議会が政権最初の2年間で行った立法の実質的な無効化を目指そうとする場合には、妥協は困難である。
民主党内にも穏健派と左派の対立があるが、それらの立法は左派の意向に配慮したものであり、それを覆すことになると、バイデン大統領に対する不満が顕在化することになる可能性がある。実際、バーニー・サンダースら左派は、共和党の要求に応じるよりは、合衆国憲法修正14条の規定を使って債務上限を上げるべきだと提唱している。修正14条とは、南北戦争敗北後の南軍の負債について定めたものであり、それを現在に適用するのは相当無理がある。
二大政党の指導部はデフォルトを回避する必要性を強く認識しているものの、両党内に妥協を拒否する勢力が存在している。世界的な混乱を避けるためにも、二大政党の指導部は、党内をまとめる工夫が必要である。