2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年8月8日

 これらの状況は、中国にとっても良いことではない。この10年間で、中国が自己主張を強めたことへの対応は厳しくなったし、中国は、域内の多くの信頼を失った。それが、米国のアジアへの「軸足回帰」にもつながった。中国は、これを軍事的包囲網と解釈している。それで、中国政府の人達は、益々、アジア諸国との間の対立を深めている。

 中国が、他国に対しより良い行動を示し、地域の共通目標により関心を示せば、中国が感じている多くの圧力は緩和出来よう。ワシントンでの米中戦略対話は、それを始める良い機会だったはずだ、と述べています。

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 わが意を得たりの論文です。

 米国が中国と交渉する以上、最重要課題は、サイバー攻撃であり、中国周辺海域における中国の挑発的行動であるべきです。が、それについては何の成果もありませんでした。もちろん、中国の態度から考えて、始めから具体的成果は期待し得なかったかもしれませんが、それを厳しく追及する態度も米側はとっていないようです。そして、環境問題での協力が、ほとんど唯一の具体的成果となっていますが、環境問題で中国を助けたからと言って、中国が他の問題で態度を和らげることはないだろう、とオースリンは厳しく指摘しています。

 オバマ第2期政権は、中国をいかに扱うかの戦略をまだ持っていないように見えます。漠然と、友好協力関係を増進したいと思っているのでしょうが、サイバー問題、東・南シナ海などが中心議題ならば、どうしても対立関係が鮮明となります。それを避けようとする限りは、主要な議題について何も話が進まないことになります。したがって、予測できる将来においては、米中関係が前に進む可能性は少ないでしょう。

 唯一懸念されるのは、2016年前半に予定されている台湾の総統選挙です。台湾にF-16 C/Dの売却を阻止した当時のホワイトハウスの中国部長メデイロスと日本部長ラッセルのコンビが、現在はそれぞれ、ホワイトハウスと国務省で東アジア全体を見る立場になっていることを考えますと、台湾問題では、米中間の何らかの新しい取引が試みられる可能性は排除できません。その場合、米議会はもとよりブレーキをかける役目を負うでしょうが、国際的には、台湾を含む東アジア安全保障情勢全体に見識を示し得るのは日本だけだということは留意する必要があるでしょう。

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