2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年8月13日

 私はこれらの急激な削減案に代わる、よりバランスのとれた赤字削減策を議会が採用するよう要求したい、と述べています。

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 米国防費削減は、日本にとっても重大な関心事項ですが、なかなか実態を正確に掴むことが困難であるように思います。この公開書簡は、それについて良い手がかりを与えてくれる資料です。

 2月末の国防長官就任以来、ヘーゲル本人が国防予算削減問題について、ここまで強く反対を表明するのは初めてです。従来は、予算削減に関する主要な政策説明は、カーター国防副長官が行うことが大半でした。また、書簡からは、5月末に作業が終了したはずのSCMRが結局公表されていないのは、強制削減の下では、どんな考慮をしても米軍が耐えうるほどの現実的なオプションを提示できなかった、とのニュアンスが読み取れます。

 ヘーゲルが言うように、今後も強制削減が継続した場合の影響は、短期的には訓練や即応態勢、中長期的には調達・兵器開発を司る国内技術基盤など、米軍の態勢そのものの弱体化に直結する分野に拡大していくことになるでしょう。

 日本のメディアであまり注目されていないのは、文民への影響です。国防総省は、今年度内の削減不足分を補うべく、7月から9月までの間、約90万人の文民職員に対して週1日(計11日)の強制無給休暇(自宅待機)を義務づけています。その中には、米軍が運用する兵器システムの下請け整備などを担当している民間契約職員なども含まれます。米軍では、艦船や航空機、インフラのメンテナンスを民間の軍事関連企業に外注している場合も多いので、民間契約技術者が休暇を強いられると、艦船や航空機の整備が長引き、ひいては部隊展開の停滞に繋がります。国防費削減が米軍の即応性を低下させる可能性は、こうした間接的な影響によるものもあるのです。にもかかわらず、予算削減をめぐる議論の先行きは未だ不透明です。事態は深刻と言わざるを得ません。

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