2024年3月2日(土)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2023年6月10日

仕事を「流す」だけの組織設計

 第3点目は、権限の問題だ。実際の各裁判所で起きている問題は、記録を管理する現場(訴廷事務など)が、実際にキャビネットや倉庫を管理していて、スペースが足りないと、記録を破棄するという判断をしていると考えられる。

 その際に、これは裁判所にもよると思うが、破棄の判断をする事務官には、その資料が「判例上、あるいは歴史的な意味、科学的、社会的な意味合い」などに照らして、保管する必要があるかないかの判断をする「権限がない」ということがあり得る。

 法令では重要な記録かどうかを判断して破棄するかを決定するようになっていても、実際に破棄を決定する現場にはそのような判断をする権限が移譲されておらず、また判断をするスキルを持った人材が配置されていないという可能性だ。

 上席に判断を仰ぐにしても、その上席の事務官にも判断スキルはなく、結局は「予算に限りがある」中でキャビネットと倉庫のスペースを空けることを優先した判断が横行しているという可能性も考えられる。

 これも、実に「お役所仕事」として「よくある」ケースと言える。コストや人員を削減するためには、判断をマニュアル化して現場に下ろしてしまう。その上で、現場には大所高所からの判断は一切期待せず、例外も認めないようにして、仕事を「流す」だけにする、そのような組織設計である。

 これでは、民間のマニュアル化されたチェーン店のオペレーションと全く変わらない。秩序と正義を維持して社会を守るという裁判所の仕事として、仮にそのような安易な組織設計がされているのであれば、これは今回の事件を契機として改めることが望ましい。

   
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