ロシア・ウクライナ戦争に関する情報をはじめとする米国防省の機密文書がSNSに流出しているという報道が4月8日に出て以来、静かな衝撃がワシントンで広がり続けている。
情報を流出した実行犯とみなされるジャック・テシェイラ容疑者は13日に逮捕された。スパイ活動法に基づく国防機密情報の無許可での持ち出し、不法な複製や保持など、複数の罪に問われることが起訴状から明らかになった。いずれの罪状も、有罪判決を受ければ、それぞれ最長、懲役10年の実刑が課される可能性がある重罪である。
明らかになる犯行態様と過去
テシェイラ容疑者は2001年生まれ。高校卒業後、マサチューセッツ州空軍に入隊、第102情報支援隊に配属された。この部隊が機密情報を取り扱う部隊であったことから「トップ・セキュリティ」のクリアランスを持ち、かなり高いレベルの機密情報までアクセスする権限を有していた。
これまでの捜査に関する報道によれば、昨年10月頃から、ゲーマーが使用することが多いオンラインチャットグループ「ディスコード」に、職場で書きとった機密情報や、職場で無断にコピーして持ち出した書類やスライドなどを掲載し始めたという。このチャットグループに属していたメンバーの一人が「ディスコード」の中の別のチャットグループの掲示板にこの情報を転載したことがきっかけで情報が拡散。特に、ウクライナの軍事態勢や作戦行動、北大西洋条約機構(NATO)諸国の対ウクライナ軍事支援などに関する機密情報に基づいた報道がロシア語メディアやツイッターなどに拡散し始めたことを4月上旬にニューヨークタイムズ紙が報じたことがきっかけで問題が表面化した。
テシェイラ容疑者が4月14日に初出廷した後、この事件に関する報道は下火になった。しかし、当たり前だが本件に関する捜査は続いており、捜査の進行とともに、新たな事実が明らかになっている。
27日には、保釈時期に関する公聴会がボストン連邦地裁で行われ、検察側がテシェイラ容疑者の自宅寝室にライフルやバズーカなど大量の銃器をはじめとする武装品が発見されたことを明らかにした。さらに、テシェイラ容疑者が過去にSNS上で、大量殺人を仄めかす発言を何度もしていたことや、銃や弾薬に関する危険な発言をしたことで、高校在学時に停学処分を受け、地元警察から銃携行許可を複数回にわたり却下されていた事実も明らかにした。
検察側は、このような過去の言動、逮捕前に私有パソコンを破壊するなど証拠隠滅行為に及んでいたことを理由に、「容疑者がまだ、SNSなどで拡散可能な機密情報を書類あるいはデータで保有している可能性がある」として、裁判が終了するまで保釈しないことを求めている。