2024年4月27日(土)

21世紀の安全保障論

2023年5月6日

 エドガー氏によれば、米政府の中で、機密情報にアクセスする人の数を増やすことで、より多くの人間が意思決定に必要な情報にタイムリーにアクセスさせる動きが近年、トレンドとして強くなっているという。しかし、この動きは「機密情報にアクセスできる人間の数を限定する、という本来の意図と反するもの」と同氏は主張し、機密情報の中でも機密度を細分化して指定している本来の意味に立ち戻るべきだと訴えている。

 今回の事件についても、「州空軍の兵士でも、情報部隊所属の兵士であればトップ・シークレットのクリアランスを付与することはおかしいことではない。しかし、今回漏洩されたような機密度の高い文書に、州空軍情報部隊の1兵士がアクセスしなければいけない理由はどこにもない」と述べ、そもそもテシェイラ氏がそのような情報にアクセスする権限を有していたことが機密情報管理制度上の不備であったと指摘する。今回のような事件の再発を防ぐために最も手っ取り早い方法は、「機密度の高い文書については、印刷すること自体を止めるべき」だと主張している。

日本が学ぶべきことは

 同氏は、数年前に、情報漏洩と、コンピューターのマルウェア汚染へのリスク管理という問題意識から、連邦政府機関のコンピューターはUSBドライブを使うことができなくなっている点を指摘し、これと同じように、機密情報については印刷そのものをできないようにするのが、最もシンプルかつ効果のある機密情報管理に繋がる、とも論じている。

 今回のような機密漏洩は、日本も対岸の火事として見ることはできない。事件の性質は異なるが、昨年12月に、海上自衛隊の現役自衛官が安全保障情勢に関するブリーフィングを退官したOBに求められ、「特定秘密」が含まれる情報を漏らし、懲戒免職されるという事件が起きたのは記憶に新しい。

 ますます厳しくなる安全保障環境を踏まえれば、機密情報をどのように保全し、同盟国・パートナー国の信頼を損なわずに情報共有ができる制度を整えていくのかは大きな課題だ。遅まきながらようやく、クリアランス制度の設置に関する議論が始まった日本が、今回の事件から学ぶべき教訓は多いのではないだろうか。

   
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