2024年12月10日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年6月27日

 英フィナンシャル・タイムズ紙の6月12日付社説‘Donald Trump’s mounting legal jeopardy’が、トランプは今後に予定される起訴を含め多数の罪状による被疑者となるが、これに徹底抗戦し大統領再選を目指すトランプの挑戦は米国の体制にかつてない危機を突き付けている、と論じている。要旨は次の通り。

機密文書容疑での罪状認否後のイベントでのドナルド・トランプ前米大統領(写真:ロイター/アフロ)

 ドナルド・トランプに対する犯罪記録は長くなる一方である。ポルノ女優に支払われた口止め料の記録を改ざんした容疑で3月に起訴されたが、機密文書を隠し持っていたことによる37の罪状での起訴がこれに加わった。8月には、ジョージア州で大統領選挙の結果を覆そうとした容疑で起訴されるようである。また、どこかの時点で、彼は2021年1月6日の米議事堂襲撃事件への関与により起訴される可能性がある。

 告発の分量と範囲は、トランプが最終的に収監される可能性が高いことを示唆する。最近の罪状だけでも400年の刑期となり得る。しかし、彼は有罪となっても刑務所から大統領選挙を戦い続けることができる。

 米国の体制は二つの重大なテストに直面する。第一に、司法はそれが公正かつ整然と機能していることを示すという極度のストレスに晒されるであろう。法の支配はすべての市民に平等に適用される。米国の最も強力な犯罪人の取り扱いが公正であるとともに、公正であるように見えることが致命的に重要である。これまでのところ、米国の司法は良く持ち堪えている。

 より重大なテストは政治的なものである。起訴はトランプの支持率を害するどころか、起訴されるたびに共和党支持層に対するトランプの掌握度は堅固になっているようである。ロン・デサンティス(フロリダ州知事)を含め共和党のトランプのほとんどの対抗馬は、バイデンの言い付けに従う腐敗した司法というトランプの主張をオウム返し繰り返している。

 トランプの陰謀論は共和党エスタブリッシュメントによって増幅されている。彼らは火遊びをしている。法の支配と連邦捜査局(FBI)のミッションを支持することは、かつては共和党の根本的な原則であった。今や、共和党は双方について反対を公然と扇動している。

 トランプは、2024年は善と悪の間の「最終戦」になると言った。彼が当選すれば、「報復」が行われるであろう。彼が勝てば間違いなく自身に恩赦を与えるであろう。


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