2024年7月22日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年7月20日

 そのような見方は一面の真理をとらえているが、マクロンのイニシアティブによるパリの「新たな金融取り決めサミット」は、より広い視点から把握しておくことも必要であろう。

 この背景には、2030年のSDGs(持続可能な開発目標)や深刻化する債務問題への対応、及び気候変動防止のパリ協定の目標を達成する上で、現在の金融支援や開発支援のシステムが十分に対応しておらず、更なる資金を動員するための改革の必要があるとの問題意識がある。加えて、ウクライナ戦争と対ロシア制裁をめぐり、西側諸国とグローバルサウスの間に溝が生じていることから、開発途上国との対話の場が必要との判断もあったであろう。

世銀・IMFの役割の復活

 パリ金融サミットには、40カ国の首脳とその他の国の閣僚、国連事務総長、世銀・IMF他の国際機関のトップ、市民社会や大企業の代表などが参加した。

 議長サマリーでは、持続可能な開発のためには債務問題への対応が不可欠として、ガーナやザンビアの債務再編のためにG20と「パリクラブ」(主要債権国会議)の共通枠組みを通じた努力の継続が必要とされた。重債務問題の解決が最貧国の持続可能な開発や気候変動へ対応する上での前提となることや、そのためのオープンな取り組みの重要性が確認された。

 他方、世銀やIMFの様々な関与が議長サマリーの随所で触れられ、特に気候変動対策での途上国向け資金調達や民間投資の促進などの面での役割に期待が表明された。今後のロードマップと称する文書では、G20会合とともに世銀・IMFの年次会合が主要な行事として列挙され、世銀・IMFの役割の復活という狙いはある程度達せられたといえよう。

 このサミットで行われた様々な提案や構想は、今後の多国間プロセスで引用され具体化するものもあろう。2024年9月の国連主催の未来サミット(Summit of the Future)で進捗状況を検討するとされ、特に気候変動防止のプロセスとの関係では留意が必要であろう。また、多くの途上国首脳が直接その主張を行う場を設けたことは、グローバルサウス対策として有効であったと思う。今後は、援助問題をめぐる中国と西側の対立が顕在化していく中でのG7の結束や、グローバルサウスとG7全体との調整といった側面への配慮が重要となるであろう。

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