2024年7月22日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年7月20日

 英エコノミスト誌調査部門のデマレが、パリでの金融サミットを通じて西側諸国が債務再編交渉や世銀・国際通貨基金(IMF)の役割といった問題で中国に対応する動きが出ており、今後、援助の分野が西側と中国の影響力争いの場となると2023年6月22日付の米国外交専門メディア「フォーリン・ポリシー」で論じている。

(Tinnakorn Jorruang/gettyimages)

 6月22日と23日に約50カ国の首脳がパリに集まり、「新たな世界金融取り決めサミット」が開催される。その議題は、気候変動と世界の貧困にどう取り組むかである。共同主催国のフランスとバルバドスは、途上国の債務再編のための新たなルールを作ろうとしているが、中国と西側の競争において、援助が次の戦場となりつつある。

 途上国の債務は、近年憂慮すべき段階に達し、新型コロナウイルス、米国の金利上昇、ウクライナ戦争にも起因する。多くの途上国が借金の返済に苦しみ、そのため、教育や医療に充てる資金を失い貧困は悪化している。

 さらに、債務の多くは中国に対するもので、パキスタン、ケニア、ラオスなどは、対外債務の30%以上を中国に負っている。中国は今日、世界最大の債権国で、その融資残高はIMFや世銀、22の先進国の融資額の合計より大きい。対中債務の約半分は未公表であり、正確な金額はもっと膨らむかもしれない。

 ザンビアは、2010年代にインフラ建設のために中国から数十億ドルを借りたが、新型コロナ危機で大打撃を受け、2020年、中国に利払いの停止を要請したが拒否され、債務不履行に陥った。これは一つの例にすぎない。

 中国の融資慣行に対する途上国の憤りの高まりは、西側にとって好機でもある。パリ金融サミットの一つの目的は、債務が再編成される際に、20カ国・地域(G20)の共通債務処理枠組みを推進して西側が交渉の席につくことを確保することだ。ただ、今まで中国の拒否により上手く行っていない。中国は二国間で、密室で債務を再交渉するつもりだ。これでは、債務国の交渉立場は明らかに弱くなる。 

 西側は、中国の困難が、世銀とIMFが世界をリードする多国間開発金融機関としての地位を回復するという第二の目標に弾みをつけることを期待している。

 パリ金融サミットについて、重要なのは象徴的な意味である。西側はようやく、グローバルサウスで影響力を増す中国に対応しようとしている。このことは、援助が急速に中国と欧米の影響力をめぐる戦場となりつつあることを示す。

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 この論説は、パリで開催された世界金融サミットを、深刻化しつつある最貧国の債務の再編交渉で西側が中国と同じテーブルに着くことを確保し、また、世銀とIMFの役割を復活させることにより、中国と対抗する好機として位置付けている。その背景には、コロナ後の中国の経済的困難や中国の融資慣行に対する開発途上国の憤りの高まりがあるとしている。


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