加えて、IEAとは先程述べた通りOECDの組織なので、その加盟国のほとんどはEU諸国であり、EUが賛同できない提案は通りにくい。また、昨年LNGの調達で苦しい思いをした、フィリピンやバングラディシュ、パキスタンといったアジア諸国は入っていないし、中国といった日本に匹敵するLNG輸入国も入っていない。こうしたことが、IEAを中心にLNGセキュリティの枠組みを構築する限界にもなっている。
日本が「笑顔で振り返られる日」は来るのか
今回のLNG産消会議では、結局の所、「国際LNGセキュリティスキーム」に関する具体的な公式提案がなされることはなかった。「議長サマリー」において、IEA内に設置されたタスクフォースと、経産省とIEAが行ってきたワークショップでの議論が紹介されているのみだ。しかも「IEAやLNG産消会議参加国等の意見を代表するものではない」と何度も念を押されている。
LNG産消会議の後の会見で、貞森恵祐IEAエネルギー市場・安全保障局長は、「(ガスについて)IEAは石油のような運営上の役割を果たすことができないかもしれない」と述べた。
今後は、今年9月に予定されているIEAガス閣僚会議に向けて研究や議論が継続され、来年2月のIEA閣僚会議において何らかの合意が得られることが目指されている。国際的なエネルギー安全保障の枠組み構築を、日本が主導するということは過去に例のないことであり、これまで述べてきた困難があるとしても、何らかの形で身のある結果が得られることを期待したい。
会議の最後に西村経産大臣は、「いつかこの日が歴史のターニングポイントだと、笑顔で振り返ることができるよう、引き続き皆さんと協力していきたい」と述べた。
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