2024年11月22日(金)

2024年米大統領選挙への道

2023年7月27日

「プーチンはウクライナとの戦争にすでに敗れた」という発言の狙い

 ドナルド・トランプ前大統領は18年7月16日、フィンランドの首都ヘルシンキにある大統領公邸で、ウラジーミル・プーチン露大統領と共同記者会見に臨んだ。そこでロシアの16年米大統領選挙介入の疑惑について「あなたは誰を信じるのか」と、記者団から質問されたトランプ前大統領は、「プーチン大統領は非常に力強く(ロシアの介入を)否定した」と答えた。同前大統領は、ロシアの選挙介入があったと結論を出した米情報機関よりも、プーチン氏を信じたのだ。

 これに対してバイデン大統領は7月13日、トランプ前大統領とプーチン大統領が共同記者会見をした大統領公邸で記者会見を開き、「プーチンはウクライナとの戦争にすでに敗れた」と主張した。

 その狙いは、NATO結束による成果のアピールであったのかもしれないが、プーチン大統領の16年米大統領選挙介入「否定」に賛同したトランプ前大統領と自分を、鮮明に対比することであったとも言える。真の狙いは後者だろう。

 つまり、バイデン大統領の上の発言は、トランプ前大統領と24年米大統領選挙をかなり意識したものであった。

ウクライナ支援を有権者の生活に結び付けるトランプ

 一般に米大統領選挙では、外交は主要な争点にはならない。有権者は自身の生活に直結した争点に強い関心を示すからだ。

 ロイターと調査会社イプソスの共同世論調査(23年7月7~9日実施)では、「米国が直面している最も重要な問題は何か」という質問に、米国民の21%が「経済」と答えたのに対して、「戦争」と回答した者はわずか2%であった。

 そこでバイデン大統領は、中間層の拡大並びに低所得者層の底上げによる経済成長を目指す「バイデノミクス」を全面に出して、経済におけるクレジット(手柄)を得て、選挙戦を有利に戦おうとしている。

 一方、共和党大統領候補指名争いで独走するトランプ前大統領は、バイデン政権のウクライナ支援は「やり過ぎ」という立場をとり、支援と税金をリンクさせている。ウクライナ支援を有権者の生活に結び付けて議論しているのだ。


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