2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年8月29日

 当時、フィリピンは米国との間で、在比米軍基地(クラーク空軍基地、スービック海軍基地)の継続について強い要求を出して交渉していました。米側は呆れて、結局、米軍はこの両基地から撤退しました。

 その後、領有権の棚上げを言っていた中国がミスチーフ礁に建造物を作り、実効支配下においてしまったのです。当時、ベーカー米国務長官は、フィリピンが米国の介入を求めてきたが、基地交渉のこともあり、介入しなかったと言っていたそうです。基地交渉がこじれる前には、米国は、この問題には米比条約が適用されると言っていました。

 当時とは異なり、現在、フィリピンは、対中関係で、アセアンに加え、米国、日本、豪州の支援を得ようとしています。経験から学んだということでしょう。フィリピンがスカーボロ礁問題を国際海洋法裁判所に提起していること(中国は応じていませんが)、基地問題が影響を及ぼすこと等について、日本にもフィリピンの経験は参考になるでしょう。

 日本は、フィリピンのこのような対中政策を基本的には支持すべきでしょう。巡視船の供与をするのは時宜を得ています。安倍総理の7月下旬の訪比も時宜を得ていました。

 ただ、フィリピンに多くを期待されても、日本としては応じられないこともあります。集団的自衛権が行使できない限り、特異な歴史の産物である日米安全保障条約以外に同盟はあり得ません。集団的自衛権問題は、日本が同盟を結べるか否かの問題としても考えられるべきでしょう。

 フィリピンにとっては、対米関係が最重要であり、それをあくまで重視することが適切でしょう。「食欲は食事中に増える」との諺がありますが、ミスチーフ礁を食べてしまった中国には警戒が必要です。

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