中古車販売大手ビッグモーターの事件を見ると、よくぞここまで一企業の不祥事が拡大するものだとため息が出るほどである。以前、ある女性国会議員が疑惑の人物に対して「疑惑の総合商社」というコメントを言い放ったが、同社はまさに世の中の不祥事を集めたような会社になっている。
本件は当初、週刊誌などの報道が先行する一方、いわゆる大手メディアは静観していた印象だ。しかし問題が顕在化し、監督官庁が対応に追われ出すと、メディア報道も一気に熱を帯びるようになる。多くのテレビや新聞でビッグモーターを批判する記事や社説が放送・掲載された。
昭和のモーレツ企業が生んださまざまな歪
当初、一部メディアの中では、この問題をどこの部署が取材するのかという役割分担で押し付け合いがあったという。保険金の詐欺事件だから社会部、いや自動車整備関連だから国交省を取材する経済部、といった具合である。
だがその後、ビッグモーターをめぐってさまざまな事案が噴出し、複数の大臣が記者会見をやり始めると、もはやそんなことは言っておられず、メディア側も総力戦で対応している様子だ。それにしても一つの会社が、ここまで各方面から指弾される状況は、近年珍しい。
数年前、筆者も自家用車を処分する際、ビックモーターに査定を依頼したことがある。他の業者にも申し込んだが、ビッグモーターの営業マンが一番早く飛んできた。他社の担当者と比べても押し出しが強く、一番熱心だった記憶がある。この時は買取価格が折り合わず、結局下取りに出したが、振り返るとビッグモーターはこうした営業手法で急成長してきたのだと今になって思う。
一連の不祥事を受けて、ビッグモーター事件の本質は何かと企業弁護士や信用調査会社幹部に聞いてみたところ、彼らが口をそろえて指摘したのが「昭和のモーレツ企業が、ガバナンス不在のまま大きくなり、令和に立ち現れた」というイメージで、図らずも同じ意見だった。