夏から秋にかけて人事の季節がめぐってくるのは、政界がこの時期、〝凪〟状態にあることと関係がある。
年初に召集される通常国会は、会期延長がなくても6月まで続く。秋になれば、積み残しになっていた法案、台風被害救済の補正予算案審議などの臨時国会が、ほとんど毎年、召集される。
永田町のつかの間の休戦期間中に大臣を交代させ、秋の国会論戦開始までに省庁内を把握、答弁に遺漏なきを期すことができるようにとの配慮だ。今回予想されている9月中下旬は、国連総会など首相の外交日程を考慮すればベストタイミングなのだろう。
守りの人事か、清新な印象か
今回の改造は、政権の立て直し、起死回生を図るという〝守り〟の人事にならざるをえないだろう。
昨年8月から続く第2次岸田改造内閣は、旧統一教会との関係、失言などをめぐって4人の閣僚が次々と辞任に追い込まれ、それ以来支持率低迷が続いている。適当な後任を得て、かろうじてここまで乗り切ってきたが、首相としては、このあたりで屋台骨を再強化し、実力閣僚を適所につけて、臨時国会、衆院解散、来年の総裁選をみすえた政局を乗り切りたいところだろう。
個別人事では、河野太郎デジタル相、高市早苗経済安全保障担当相らの処遇、閣僚ではないが、週刊誌で妻の〝疑惑〟を報じられている木原誠二官房副長官を留任させるかどうか――などが焦点だ。
21(令和3)年の自民党総裁選で自らとあいまみえた河野氏を、首相は閣内に取り込み、動きを封じ込めてきた。河野氏はマイナンバーカード導入をめぐる混乱で党内からの批判を浴びているため、野に放っても自らを脅かす恐れはないとの判断から交代させる可能性もあるだろう。
高市氏も河野氏同様、前回、首相と総裁の座を争って敗れはしたが、岸田―河野の決選投票で高市票が多数、岸田陣営に流れたことから、論功行賞の意味合いもあって入閣していた。しかし、防衛費増額に伴う増税問題をめぐって閣内にあって異を唱えるなど、その言動が政権内に波風を立てがちで、党内に批判が強い。
安倍晋三元首相という大きな後ろ盾を失った高市氏は、岸田首相にとっては河野氏同様、脅威にならないという見方もあり、閣外に去ることもあり得る。
岸田首相は8月28日、河野、高市両氏と会食したが、その際、何らかの方針を伝えた可能性がある。
フレッシュさを印象付ける人事として、取りざたされているのは小渕優子元経産相を幹事長に抜擢するという観測だ。
父親は故小渕恵三元首相。49歳の若さながら、すでに2度、閣僚を経験しており、知名度は抜群。 しかし、もともと森喜朗元首相の推薦であるため、同氏への反発や、小渕氏自身、経産相時代に政治資金規正法違反の疑いをもたれて辞任した経緯がある。
さらには後ろ盾だった青木幹雄元官房長官の死去もあって、見送られる可能性もささやかれる。
国民の間になお人気の高い石破茂元幹事長を要職で起用するのではないかとの憶測も流布されている。石破氏は前回の総裁選で河野氏を支援、岸田首相とは対立関係にあるが、支持率低迷から脱却するために、首相が石破人気を利用する可能性はあろう。
首相が8月4日に石破氏と食事を共にしたことも、こうした憶測に勢いを与えている。